Research Abstract |
本課題が採択されたのは,年度途中(10月)であったため予定を変更し,次年度以降に行う内容について研究を遂行した。すなわち,^<13>Cおよび^<15>Nで同時ラベルされた稲わら堆肥を水田土壌に鋤き込み施用し,土壌中における微生物分解やバイオマスにおける有機態窒素の代謝回転率,植物体への有機態窒素吸収について検討を行った。ポットに水稲コシヒカリを栽培し,土壌中のバイオマス,水抽出物,リン酸抽出物の炭素・窒素含量やそれぞれの^<13>C・^<15>N量を測定した。植物体については,生育・収量調査を始めとして全炭素量,全窒素量およびそれらの^<13>Cおよび^<15>N濃度を測定した。稲わら堆肥窒素の水稲による利用率は,9.2%であった。現在,微生物バイオマスの役割解析や炭素循環について測定や解析を行っているところであり,次年度の関係学会において発表を行う予定にしている。また,^<15>Nでラベルしたヘアリーベッチ(緑肥作物)を水田土壌に施用し水稲栽培を行ったときのたときの緑肥由来窒素が,バイオマス窒素への取り込みや水稲吸収,土壌残存,脱窒などへの移行量の経時的な変化を解析することができたため,アメリカ土壌学会で発表を行った。ベッチを鋤き込んだ時の緑肥窒素の移行率は,バイオマス量として2%,有機化26%,水稲吸収37%,脱窒32%,残燈2%であった。またカバークロップとして土壌表面に施用した場合の移行率は,バイオマス量として1%,有機化12%,水稲吸収12%,脱窒74%,残燈1%であった。緑肥のカバークロップとしての利用は,抑草効果が認められたが,緑肥窒素の有効利用や環境保全という面では,むしろ鋤き込み施用の方が植物への利用率が高いこと,バイオマスや有機化(微生物取り込み)量も多くなり,安定的な窒素供給が可能となること,脱窒量が少なくなるという点で有利と考えられる。
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