Research Abstract |
水稲による微生物バイオマス炭素および窒素の有機態窒素吸収を含めた水田土壌における炭素・窒素動態の解析を行うために,微生物菌体(細菌Bacillus subtilisと糸状菌Aspergillus niger)を^<13>C-グルコースと^<15>N-塩安で同時ラベルし,生理食塩水で洗浄した菌体懸濁液を基肥時に水田土壌へ微量注入し,トレーサー実験を行った。細菌由来炭素の植物への移行率は,根2.13%,茎葉7.41%,穂4.94%となった。糸状菌由来炭素の移行率は,根19.3%,茎葉2.61%,穂24.0%と細菌由来炭素より高くなった。これに対して,バイオマス窒素は,細菌由来窒素の移行率が35.5%,糸状菌由来窒素が14.2%と炭素とは逆の傾向が見られた。昨年までの結果と照らし合わせると,微生物バイオマス炭素の水稲による経根的吸収割合は,低分子化合物や植物体残渣由来炭素に比べて,4〜13倍程度高くなることが示された。一方,微生物バイオマス炭素の土壌残存について検討を行ったところ,細菌由来炭素の半減期は栽培全期間で安定しており,58日となった。これに対して糸状菌由来炭素の半減期は変動し,栽培初期が35日,中期78日,後期45日となり,糸状菌菌体の分解・代謝速度は細菌に比べて比較的高いことが示された。細菌および糸状菌由来窒素の半減期は,栽培初期にそれぞれ16日と11日,中期で69日と41日になり,糸状菌菌体窒素の回転率が高いことが明らかとなった。炭素および窒素の未回収割合は,ほとんどが脱炭酸とメタン生成,脱窒に移行したものがほとんどと考えられるが,細菌バイオマスに比べて糸状菌バイオマスの系外への放出量がたくなった。これは,糸状菌バイオマスの土壌中における分解速度が相対的に高いためと考えられた。
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