2003 Fiscal Year Annual Research Report
Oxytocin受容体ノックアウトマウスによる受容体遺伝子機能の解明
Project/Area Number |
14360046
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西森 克彦 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (10164609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 正 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90240845)
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Keywords | オキシトシン / 受容体 / 分娩 / fp受容体 / プロスタグランジンF2α / レジテントイントゥルーダーテスト / 攻撃性 |
Research Abstract |
本年は分娩の誘導を引き起こす生体システムであるOT/OTRシステムとprostaglandinF2α/Fp受容体システムが、マウスの分娩に於いてそれぞれ占める機能についての解析と、OTR遺伝子欠損マウスで見出された攻撃性の上昇について解析を行った。 <分娩誘導に於けるOT/OTRシステムとprostaglandinF2α/Fp受容体システムの機能分担> まず予備実験として10週齢の妊娠17.5日目のC57BL/6Jマウスにprogesterone receptorアンタゴニストのRU486を皮下注射し体重変化を観察した。この結果RU486を投与しなかった群に比べ投与群では18.0日に体重減少が起こり、早期にRU486によって分娩が誘導された。次にfp-/-・otr-/-の妊娠19.0日目にRU486を皮下注射したところ、19.5日目に体重の減少が見られ、RU486処理によって分娩可能となったことが明らかとなった。この結果からfp-/-・otr-/-マウスは子宮筋収縮力の低下により分娩不能なのではなく、fp-/-と同様に妊娠後期の血中プロゲステロン値の低下が起こらないため分娩異常が現れたことが示唆された。 <OT/OTR systemによる攻撃性の制御> 我々はotr遺伝子欠損マウス(otr-/-)の雄において同腹子を頻繁に攻撃する傾向が観察されたことから、このotr遺伝子欠損マウスと、ot遺伝子欠損マウスを比較しながらOT/OTRシステムと攻撃行動の制御についてresident intruderテストにより詳細な解析を行った。 resident intruderテストは数週間個飼いした披検マウス(resident)のケージ内に集団飼いした雄マウス(intruder)を投入し、5分間のtestを3回(test1,2,3)行い、各々のテスト間に5分のintervalをもうけ、各テストでの積算攻撃回数と積算攻撃時間を測定する方法である。test1,2においてotr-/-ではwtに対し攻撃回数が有意に増加していた。積算攻撃時間もtest1で攻撃時間が有意に増加していた。このことからotr-/-マウスでは特にtest1において特徴的な攻撃性の上昇を見せた。otr+/-はwtと比較して攻撃性に変化を示さなかった。 otr-/-はwtと比較してintruderマウスをケージに入れてから、攻撃を行うまでの時間も非常に早い傾向がみられ、wtでは大半のマウスが5分以内には攻撃を行わなかったのに対し、otr-/-では1分以内に攻撃を行う個体も含め、約半分のマウスが3分以内に攻撃を行った。 ところがリガンドのオキシトシン遺伝子欠損マウスでの攻撃性の測定ではwtと比較して攻撃性に変化は無かった。このot-/-マウスはot+/-(♂)x ot+/-(♀)より生まれた個体を用いてテストしていたので、次にot-/-(♂)x ot-/-(♀)より生まれたot-/-マウス(母マウスがot-/-では乳汁分泌が起きないため子マウスがすぐ餓死するので、出産直後に子マウスは野生型の乳母マウスに預ける)を用いたところ、今度は成育後此のマウスを用いたresident intruderテストで明瞭な攻撃性の上昇が見られた。これより、胎児期のマウスのOTRへのOTの作用が、攻撃性低下を含む正常な社会行動の樹立に必須な脳中枢を形成するとに必要であることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kawamata, M. et al.: "Vasopressin-induced contraction in the mouse uterus is mediated only by oxytocin receptor, but not in the human uterus"Eur J.Pharmacol.. 472. 229-234 (2003)
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[Publications] Kimura, T., et al.: "Molecular regulation of the oxytocin receptor in peripheral organs"J Mol.Endocrinol.. 30. 109-115 (2003)
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[Publications] G.L.Nicolson, et al.: "Tumor metastasis-associated human MTA1 gene and its MTA1 protein product : role in epithelial cancer cell invasion, proliferation and nuclear regulation"Clin Exp Metastasis. 20. 19-24 (2003)