Research Abstract |
ゴキブリ類の配偶行動における求愛接餌と採餌行動における味覚感覚生理の共通基盤と特異性について探求するため以下の実験を実施した. 1)チャバネゴキブリにおける味覚滋養物質の複合的認知機構の解析 チャバネゴキブリ雄成虫が背面のフェロモン腺から分泌する摂食刺激物質は,これまでの化学分析から,オリゴ糖類,リン脂質,アミノ酸ならびにコレステロールから成り立っていることが明らかになった.これらの物質は,高カロリーの一般食餌に含まれる物質でもあり,これら各成分に対する摂食刺激応答性を,雌に対する味覚受容の観点から調べた.その結果,それぞれのカテゴリーの単独成分系では応答が著しく低く,相互に混合することによってはじめて的確な摂食反応を示すことが判明した.オリゴ糖類,コレステロール,リン脂質,アミノ酸の各成分の濃度別組み合わせバイオアッセイにより投与曲線を作成,各組成物の混合による活性発現増強効果を詳細に調べた. 2)昆虫の口器味覚感覚子の機能と電気生理学的解析 チャバネゴキブリにおける口器味覚感覚毛について,maxillary palp, labial palpおよびparaglossaに集中的に存在することを明らかにし,その形態的特性,雌雄における比較を行なった.一方,これら口器に分布する感覚子に対する電気刺激応答を測定するために,微小神経電位測定システムを構築した.まず口器の構造の比較的単純な鱗翅目幼虫を用い,一連の研究で明らかにした摂食刺激物質と摂食阻害物質に対する興奮電位応答をチップレコーディング法により測定した.アゲハチョウの終齢幼虫においては摂食刺激物質(-)-quinic acidに対して,口器medial styloconic sensillaが有意な電位応答を示した.また,摂食阻害成分であるgentisic acid apiosy 1-0-glucosyl esterに対し約2mVに達する阻害的インパルスを観測した.これらの基礎データをもとにゴキブリ類におけるチップレコーディング測定手法を開発する計画である.
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