2002 Fiscal Year Annual Research Report
花粉自他識別情報の受容機構に関するタンパク質構造化学的解析
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14360066
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高山 誠司 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (70273836)
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Keywords | 自家不和合性 / アブラナ科植物 / NMR / SP11 / SRK / SLG / 立体構造 / S遺伝子 |
Research Abstract |
本研究は、アブラナ科植物の自家不和合性の自他識別反応に関わる花粉側SP11リガンドと雌ずい側SRK受容体複合体の構造解析を通じ、本反応の蛋白質構造化学レベルでの解明を目指すものである。2年間で4項目の具体的目標を掲げており、本年度はその内の2項目について以下の成果を得た。 1)SP11蛋白質の立体構造の解明 これまでに、SP11がS遺伝子特異的な配列を有すること、4つのS-S結合を分子内に持つ単量体構造をとっていることを明らかにしてきた。本年度は、S_8遺伝子由来のSP11(分子量5716.2、50残基)を化学合成により大量に調製し、NMRを用いて溶液状態における立体構造の解析を行った。その結果、1本のαヘリックスと3本のβストランドから成る特徴的なβαββ構造を有することが明らかとなった。この構造は、S-S結合の位置等は異なるものの、全体的には植物ディフェンシン類と類似していることが示唆された。また、他のS遺伝子由来のSP11配列をこの構造上に重ね合わせ比較解析したところ、αヘリックスと2番目のβシート構造の間のループ領域が分子表面上に露出した超可変領域を形成する可能性が示唆され、この部分がS遺伝子特異性を担う領域の一つであると予想された。 2)SRK受容体複合体の構造解析 これまでに、SP11がSRKとSLG様の分子量60Kの蛋白質から成る柱頭細胞膜上の受容体複合体に結合することを明らかにしてきた。しかし、柱頭にはSLG様の構造を持つ蛋白質が多数存在することから、60K蛋白質の同定には更なる確認が必要であった。そこで、本年度は、SP11蛋白質のN末端側にbiotinを付加したものを化学合成し、これをアフィニティータグとして、SRK受容体複合体を柱頭ミクロソーム画分より精製した。本法により回収された60K蛋白質は、柱頭細胞壁中の可溶性SLGより分子量が大きいことが示された。さらに、SLGに対するペプチド抗体を多数作製して抗原性を調べた結果、60K蛋白質はSLGとは異なる分子である可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] S.Takayama: "Peptide signalling in plants"Curr. Opin. Plant Biol.. 5. 382-387 (2002)
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[Publications] H.Shiba: "The dominance of alleles controlling self-incompatibility in Brassica pollen is regulated at the RNA level"Plant Cell. 14. 491-504 (2002)
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[Publications] S.Takayama: "Molecular mechanism of self-recognition in Brassica self-incompatibility"J. Exp. Bot.. 54. 149-156 (2003)
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[Publications] T.Kakizaki: "Linear dominance relationship among four class-II S haplotypes in pollen is determined by the expression of SP11 in Brassica self-incompatibility"Plant Cell Physiol.. 44. 70-75 (2003)
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[Publications] H.Shiba: "Genomic organization of the S-locus region of Brassica"Biosci. Biotechnol. Biochem.. 67. 622-626 (2003)
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[Publications] G.Suzuki: "The S haplotypes lacking SLG in the genome of Brassica rapa"Plant Cell Rep.. (in press).
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[Publications] M.Iwano: "Immunohistochemical studies on translocation of pollen S-haplotype determinant in self-incompatibility of Brassica rapa"Plant Cell Physiol.. (in press).
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[Publications] 磯貝 彰: "植物は自分の花粉をどうやって見分けるか-アブラナ科植物の自家不和合性の分子機構"蛋白質核酸酵素. 47(6). 700-707 (2002)