2002 Fiscal Year Annual Research Report
タウリンによる脳回路形成・修復機構の解明:タウリンの新しい脳生理作用
Project/Area Number |
14360071
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久恒 辰博 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (10238298)
|
Keywords | タウリン / 脳回路 / 脳保護 / 脳発達 |
Research Abstract |
タウリンは、哺乳類動物の脳に最も豊富に存在する遊離アミノ酸の一つであり、脳の正常な機能の多くに不可欠である。特に発達期には、大脳新皮質にもタウリンが豊富に存在することが知られているが、その脳生理作用機構については未だ詳細に解明されていない。また、成体の脳においても、虚血や低酸素症、癲癇といった神経障害においてタウリンが大量に放出されることが知られているが、その障害時のタウリンの作用機構等についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、大脳新皮質の発達と機能をタウリンという食物質から捉え、主に電気生理学的手法を用い、大脳新皮質の脳回路に対するタウリンの脳生理作用を発達段階を追って検討し、その変化を解析した。発達期大脳新皮質に豊富に存在するタウリンは、グリシン受容体及びGABA_A受容体に作用し、Cl^-イオンの動態に関係していることが明らかになった。また発達に伴い、タウリンの主な作用対象はグリシン受容体からGABA_A受容体へとシフトすることが本研究で初めて示された。発達初期にタウリンがグリシン受容体に主に作用することは、神経回路網形成に必要なNMDA受容体の活性化におけるグリシン受容体の関与を支持するものである。また、発達後期にはタウリンは主にGABA_A受容体に作用し、さらに発達初期とほぼ同程度の応答が得られた。これまで、タウリンの重要性は発達初期に重きを置かれて研究されてきたが、タウリンのタウリン感受性受容体チャネルへの作用が発達後期そして成体においても何らかの働きを持つことが示唆されたといえる。発達後期および成体では、タウリンは過分極を起こす抑制性のものであった。成体でも低酸素症や虚血などの神経障害の際に、細胞内に蓄積されているタウリンが細胞外へ大量に放出されることが知られている。この際にタウリンがGABA_A受容体に働き、膜電位を過分極側に変動させることにより、このような障害時に特徴的なグルタミン酸毒性から細胞を保護していることが示唆された。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Yoshida N, Hishiyama S, Yamaguchi M, Hashiguchi M, Miyamoto Y, Kaminogawa S, Hisatsune T: "Decrease in expression of alpha5beta1 integrin during neuronal differentiation of cortical progenitor cells"Experimental Cell Research. (In press). (2003)
-
[Publications] Okada H, Miyakawa N, Mori H, Mishina M, Miyamoto Y, Hisatsune T: "NMDA receptors in cortical development are essential for the generation of coordinated increases in [Ca^<2+>]_i in neuronal domains"Cerebral Cortex. (In press). (2003)
-
[Publications] Koketsu D, Mikami A, Miyamoto Y, Hisatsune T: "Non-renewal of neurons in the cerebral neocortex of adult Macaque monkeys"The Journal of Neuroscience. 23. 937-942 (2003)
-
[Publications] Miyakawa N, Uchino S.Yamashita T, Okada H, Nakamura T, Kaminogawa S, Miyamoto S, Hisatsune T: "A glycine receptor antagonist, strychnine, blocked NMDA receptor activation in the neonatal mouse neocertex"Neuroreport. 13. 1667-1673 (2002)
-
[Publications] Kaji T, Kaieda I, Hisatsune T, Kaminogawa S: "SN-1 induced p53-dependent apoptosis of murine primary neural cells : a critical role for p21^<ras>-MAPK-P19^<ARF> pathway"Nitric Oxide. 6. 125-134 (2002)
-
[Publications] Mohri M, Reinach PS, Kanayama A, Shimizu M, Moskovitz J, Hisatsune T, Miyamoto Y: "Suppression of the TNFalpha-induced increase in IL-1alpha expression by hypochlorite in human corneal epithelial cells"Investigative Ophthalmology & Visual Science. 43. 3190-3195 (2002)
-
[Publications] Shioda R, Reinach PS, Hisatsune T, Miyamoto Y: "Osmosensitive taurine transporter expression and activity in human corneal epithelial cells"Investigative Ophthalmology & Visual Science. 43. 2916-2922 (2002)