2003 Fiscal Year Annual Research Report
タウリンによる脳回路形成・修復機構の解明:タウリンの新しい脳生理作用
Project/Area Number |
14360071
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久恒 辰博 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (10238298)
|
Keywords | タウリン / 遊離アミノ酸 / 発達期 / 哺乳動物 / グリシン受容体 / GABA_A受容体 / パッチクランプ法 |
Research Abstract |
タウリンは、哺乳類動物の脳に最も豊富に存在する遊離アミノ酸の一つであり、脳の正常な機能の多くに不可欠である。特に発達期には、大脳新皮質にもタウリンが豊富に存在することが知られているが、その脳生理作用機構については未だ詳細に解明されていない。本研究では、タウリンに対する受容体を特定することを目的とし、解析を進めた。発達期大脳新皮質において、各種の阻害剤を用いた実験により、タウリンはグリシン受容体だけでなく、GABA_A受容体にも作用していることが明らかになった。さらに、タウリンによる反応は、発達初期(生後4〜6日目;P4-6)にはグリシン受容体阻害剤によって大きく阻害されるのに対し、発達後期(P29-P33)では、GABA_A受容体阻害剤によって大きく阻害された。タウリンの作用は、発達初期(P2)には細胞膜の脱分極を起こし興奮性に働くのに対し、発達後期(P31)には過分極を起こし抑制性に働くことが示された。これは、発達初期には細胞内Cl^-イオン濃度が高く、発達と共に減少していくため、受容体チャネルの活性化でCl^-イオンの動態は流出膜電位の上昇)から流入(膜電位の下降)へと変化するためである。免疫染色によって発達初期にはグリシン受容体がCl^-イオンを細胞内に取り込むトランスポーターであるNKCC-1と共発現しているが、発達後期にはNKCC-1の発現が見られないことからも細胞内Cl^-イオン濃度の減少が支持された。大脳新皮質のグリシン受容体は発達と共に急に減少すると思われていたが、免疫染色法およびパッチクランプ法により発達後期の神経細胞においてもその存在が確認された。本研究により、タウリンの脳細胞に対する作用を分子レベルで明らかにすることができた。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Yoshida M, Fukuda S, Tozuka Y, Miyamoto Y, Hisatsune T: "Developmental shift in bidirectional functions of taurine-sensitive chloride channels during cortical circuit formation in postnatal mouse brain"Journal of Neurobiology. (in press). (2004)
-
[Publications] Sato Y, Koketsu D, Ageyama N, Ono F, Miyamoto Y, Hisatsune T: "Successful retrograde transport of fluorescent latex nanospheres in the cerebral cortex of the Macaque Monkey"Experimental Animal. (in press). (2004)
-
[Publications] Okada H, Miyakawa N, Mori H, Mishina M, Miyamoto Y, Hisatsune T: "NMDA receptors in cortical development are essential for the generation of coordinated increases in [Ca^<2+>]_i in "Neuronal Domains""Cerebral Cortex. 13. 949-957 (2003)
-
[Publications] Fukuda S, Kato F, Tozuka Y, Yamaguchi M, Miyamoto Y, Hisatsune T: "Two distinct subpopulations of nestin-positive cells in adult mouse dentate gyrus"Journal of Neuroscience. 23. 9357-9366 (2003)
-
[Publications] Koketsu D, Mikami A, Miyamoto Y, Hisatsune T: "Non-renewal of neurons in the cerebral neocortex of adult Macaque monkeys"Journal of Neuroscience. 23. 937-942 (2003)
-
[Publications] Yoshida N, Hishiyama S, Yamaguchi M, Hashiguchi M, Miyamoto Y, Kaminogawa S, Hisatsune T: "Decrease in expression of α5β1 integrin during neuronal differentiation of cortical progenitor cells"Experimental Cell Research. 287. 262-271 (2003)
-
[Publications] 久恒辰博: "「幸せ脳」は自分で作る -脳は死ぬまで成長している"講談社. 216 (2003)