2003 Fiscal Year Annual Research Report
小笠原島嶼の移入樹種の分布拡大メカニズムの解明と森林の保全管理手法の開発
Project/Area Number |
14360091
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
石田 厚 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域・樹木生理研究室, 室長 (60343787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 隆志 山梨県環境科学研究所, 植物生態研究室, 主任研究員 (90342964)
山下 直子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所・森林育林研究グループ, 研究員 (70353901)
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Keywords | アカギ / アコウザンショウ / キバンジロウ / 回転率 / 光変動環境 / 乾燥実験 / 光合成 / 呼吸 |
Research Abstract |
小笠原の父島で、光量子、温湿度、雨量、土壌水分の気象観測を連続して行った。また小笠原島嶼では、生育する植物の生理生態的な一般的情報が不足しているため、父島に生育する約30種類の植物について、葉の形質(比葉面積重や窒素含量など)を測定し、葉の回転率の測定を去年に引き続き行った。 室内実験において、移入分布拡大樹種に関しては、土壌の発達した谷部に多く見られるアカギと谷部から乾燥した尾根部にまで見られるキバンジロウ、および小笠原の固有樹種の値樹を用い、光変動環境下や土壌水分変動環境下での成長や生理的特性の馴化を比較した。その結果、葉や根の回転率は、先駆性樹種のアコウザンショウでもっとも大きく、遷移後期の樹種であるシマホルトノキで最も小さく、アカギでは中間であった。特に暗条件から明条件に移した場合、アコウザンショウやアカギでは葉や根の回転率が上昇したが、シマホルトノキでは上昇は小さかった。また暗条件での葉面積/細根面積比はこの3樹種間で差は見られなかった。一方暗条件から明条件に移した場合、アコウザンショウとシマホルトノキでは葉面積/細根面積比の木きな低下が見られたが、アカギではこの比の低下は小さかった。これはアカギの根の高い窒素や根の吸収能力にあると考えられた。従って一定の光条件ではなく変動光環境下で、アカギは形態の変化が小さいにも関わらず、高い成長を可能にしていることがわかった。これにより台風などの攪乱に対し、移入樹種であるアカギがよりよく成長できる機構がわかってきた。また土壌水分変動実験では、乾燥した尾根部にも見られる移入樹種キバンジロウは、耐乾燥注が強く、乾燥状熊下でパルス的与えられた水を素早く利用し、気孔を開き光合成ができることができることがわかった。来年度、谷部のみに見られるアカギについても同様の実験を行い、移入樹種の分布特性を生理面から調べていく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yamashita N., Koike N., Ishida A.: "Leaf ontogenetic dependence of light acclimation in invasive and native subtropical trees of different successional status."Plant, Cell & Environment. 25巻・10号. 1341-1356 (2002)
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[Publications] 山下直子, 小池信哉, 石田厚: "遷移段階の異なる樹種の弱光への馴化特性"日本林学会北海道支部論文集. 51巻. 21-23 (2003)