2005 Fiscal Year Annual Research Report
小笠原島嶼の移入樹種の分布拡大メカニズムの解明と森林の保全管理手法の開発
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14360091
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
石田 厚 独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 室長 (60343787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 直子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 研究員 (70353901)
中野 隆志 山梨県環境科学研究所, 植物生態研究室, 主任研究員 (90342964)
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Keywords | アカギ / キバンジロウ / 光 / 水 / 乾燥 / 栄養塩 / 葉寿命 / 材密度 |
Research Abstract |
小笠原の父島に生育する約30種類の植物種について、葉の回転率の測定を去年に引き続き行い、4年間の測定から得られたデータから葉の寿命を決定した。この葉の寿命とさまざまな葉の形態的・生理的な形質や材密度との関係をとり、形質の種間の収れん性(一定の相関関係)と特定の科に見られる特異性(相関関係のずれ)の検討を現在行っている。単位葉面積当たりの乾重(LMA)と葉寿命、LMAと材密度、葉寿命と材密度の間には、それぞれ正の相関が見られた。またムクロジ科(ハウチワノキとイワザンショウ)では同じLMAや葉寿命を持っている樹種と比べ、高い材密度(すなわち重い材)を持っていた。また葉寿命と葉の窒素濃度とは負の相関が見られたが、リターの窒素濃度や落葉時の窒素回収率とは明確な相関は見られなかった。また葉寿命と葉の浸透ポテンシャルや光合成の窒素利用効率(PNUE)には負の相関が見られた。 また室内実験において、移入分布拡大樹種アカギと、在来の先駆性樹種キバンジロウと遷移後期樹種のシマホルトノキの稚樹を用い、土壌貧栄養塩耐性及び栄養塩をパルス的に与えた時の、個葉の成長や光合成の反応特性を調べた。その結果、土壌栄養塩を急激に増加させた場合、アカギやキバンジロウでは数日以内に葉の光合成速度、気孔コンダクタンス、葉の窒素濃度の増加が見られたが、シマホルトノキでは反応が遅かった。その結果、移入樹種アカギは変動栄養塩環境下で、先駆性樹種と同等の窒素利用能力を持つことがわかった。この4年間で、小笠原島嶼の移入樹種であるアカギやキバンジロウの稚樹に対し、光や水、土壌栄養塩を変動させ、その資源利用特性を調べることにより、低資源条件下での耐性が高く、また変動環境下で素早く資源を獲得し利用できる樹種が、それぞれ特定の適した環境に移入し分布拡大を可能にしていることがわかってきた。
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Research Products
(6 results)