2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規に開発された卵黄玉培養系による塩類細胞のイオン輸送機能とその分化過程の解明
Project/Area Number |
14360106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 豊二 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (70221190)
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Keywords | 塩類細胞 / 卵黄玉培養系 / 卵黄嚢上皮 / Cl^- / Na^+ / K^+-ATPase / イオン輸送 / 銀染色 / ティラピア |
Research Abstract |
水圏に生息する魚類では、体表を介して外界と体内との間で各種のイオンが濃度勾配に従って移動するが、これは陸上動物には見られない特徴である。海水中では体内に過剰となる塩類を鯉の塩類細胞から排出し、淡水中で不足するNa^+、Cl^-、Ca^<2+>などのイオンを塩類細胞から取込むことで、何れの環境でも体内のイオン濃度を生理的範囲内に保っている。塩類細胞は成魚で主に鯉に分布するが,鯛の未発達な発育初期の魚では卵黄嚢上皮や体表に広く分布することが、我々のこれまでの研究で明らかとなってきた.本研究では、塩類細胞におけるイオン輸送の生理学的機構とその分化過程を、我々が新たに開発したティラピアの「卵黄玉培養系」を用いて解明することを目的とした。 淡水および海水に2日間馴致した卵黄玉(ティラピア胚体から切取った卵黄嚢)で、卵黄嚢上皮におけるイオンの透過性を^<36>Cl^-を用いた実験で比較した。淡水および海水に馴致した卵黄玉でCl^-の濃度に差はなく、何れの環境中でもCl^-濃度が調節されていることが示された。また、^<36>Cl^-の透過性は生体と同様に卵黄玉においても淡水中より海水中で高いことが判明した。海水中ではCl^-の透過性が高まるにも関わらず、卵黄玉におけるCl^-濃度は一定に保たれていることから、卵黄嚢上皮に分布する塩類細胞が外部から流入するCl^-を能動的に排出していると考えられる。そこでCl^-を特異的に検出する銀染色によって卵黄嚢上皮におけるCl^-の排出部位を検索した。その結果、Na^+/K^+-ATPase免疫活性を示す塩類細胞の頂端部にCl^-の反応が認められた。以上の結果は、卵黄玉においても生体の胚と同様に、卵黄嚢上皮塩類細胞が海水中におけるイオン排出部位として機能していること示すとともに、卵黄玉で生体の反応が再現されたことから、その実験系としての妥当性が検証された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kaneko, T: "Chloride cells during early life stages of fish and their functional differentiation"Fisheries Science. 68. 1-9 (2002)
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[Publications] Uchida, K.: "Effects of a low-Ca^<2+> environment on branchial chloride cell morphology in chum salmon fry and immunolocalization of Ca^<2+>-ATPase in chloride cells"Canadian Journal o Zoology. 80. 1100-1108 (2002)
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[Publications] Katoh, F.: "Morphological evidence for calcium uptake through chloride cells in freshwater-acclimated killifish, Fundulus heterocitus"Fisheries Science. 68. 347-355 (2002)
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[Publications] Matsumoto, T.: "Plasma vitellogenin levels in male common carp Cyprinus carpio and crucian carp Carassius cuvieri of Lake Kasumigaura"Fisheries Science. 68. 1055-1066 (2002)
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[Publications] Miyazaki, H.: "1) Kidney specific chloride channel, OmClC-K, predominantly expressed in the diluting segment of freshwater-adapted tilapia kidney"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 99. 15782-15787 (2002)
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[Publications] Katoh F.: "Vacuolar-type proton pump in the basolateral plasma membrane energizes ion uptake in branchial mitochondria-rich cells of killifish"Journal of Experimental Biology. (印刷中). (2003)