2003 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子発現情報をベースにした植物の環境ストレス応答のモデリング
Project/Area Number |
14360153
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 英司 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00186884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖 一雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (50292628)
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Keywords | 環境ストレス / 光質 / オゾンガス / 遺伝子発現 / ストレス応答 |
Research Abstract |
本年度は,イネを植物材料として,オゾン曝露が生長や遺伝子発現に及ぼす影響を解析した。遺伝子発現は,活性酸素消去系(Cu/Zn-SOD、catA、catC、APX)と,光合成系(rbcS),エチレン合成系(ACS、ACO)を調べた。 (1)低濃度の長期間曝露実験 低濃度曝露における遺伝子発現量は、実験I(41ppbで7時間曝露)では活性酸素消去系の各遺伝子ともオゾン処理区で発現量が増加したのに対し、実験II(74ppbで12時間曝露)では増加量が少なかった。本結果により,イネでは遺伝子の転写レベルでもオゾンストレスへの適応メカニズムが存在していることが示された。しかし実験IIの結果から,曝露量の増加に伴い,適応メカニズムが機能しなくなるものと考えられる。また,rbcSに関しては,実験I、実験IIともに発現量の増加がみられ,生長解析の結果も合わせると,オゾン曝露下で光合成を維持するための適応機構が働いていると予想される。 (2)中濃度の短期間曝露実験 中濃度の6hの短時間曝露実験(実験I:93ppb,実験II:185ppb,実験III:317ppb)における曝露開始時,曝露中,曝露終了後の発現量を調べた。0時間目の発現量を基準に経時変化を追っていくと,実験II,実験IIIでは活性酸素消去系のほとんどの遺伝子で発現量の減少がみられたのに対し,実験Iではすべての遺伝子で曝露期間中に発現量の増加が認められ,1日後の発現量も増加していた。低濃度実験の結果も総合すると,100ppb以下のオゾンでは,曝露期間中から活性酸素消去系の遺伝子発現は増加し,翌日はさらに増加し,その適応反応は長期にわたって維持されると考えられ,イネにおけるストレス適応の限界オゾン濃度は100ppb〜200ppbの間であると考えられる。
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