2003 Fiscal Year Annual Research Report
脳室上衣細胞のエネルギーセンシングメカニズムと摂食及び生殖の制御
Project/Area Number |
14360177
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前多 敬一郎 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (30181580)
|
Keywords | 上位細胞 / 性腺刺激ホルモン / グルコースセンシング / ATP / ATP受容体 / カテコールアミンニューロン / 脂肪酸 / ケトン体 |
Research Abstract |
脳は生体のエネルギーレベルを感じ取り、摂食行動、エネルギー代謝、生殖機能を制御している。申請者らは、生体の血糖値が延髄付近の脳室上衣細胞によって感知され、特異的な神経経路により、上記の生体機能を制御していることを発見した。またこれまでの実験から、脳は血糖値ばかりでなく、遊離脂肪酸やケトン体など、他のエネルギー基質をも包括的に感知していると考えられる。また、ニューロンではない上衣細胞が脳脊髄液中のグルコース濃度を感知した後、どのようにその情報をニューロンへと伝えているかについてはまだ明らかでない。本研究では、延髄付近による上衣細胞が、グルコース、遊離脂肪酸、ケトン体の濃度をすべて感じ取り、それらの情報を細胞内ATPレベルに置き換えることで、エネルギーレベルを包括的に感知しており、さらにこのATPが細胞外へと放出され、直接神経伝達物質として次のニューロンに情報を伝達している、という仮説を証明することを目的とした。 すでに上衣細胞の培養系を用い、培養液中のグルコース濃度、または脂肪酸濃度の変化が細胞内カルシウム濃度の上昇を誘起し、上衣細胞がグルコースと脂肪酸の両方を感知している可能性を前年度までに示した。今年度は、ケトン体に的を絞り、負のエネルギーシグナルとしての可能性を追求した。 その結果、ケトン体の投与によりパルス状LH分泌は抑制され、摂食量は上昇し、血糖値や血中コルチコステロン濃度も上昇した。これらはすべて負のエネルギーバランス条件下において起こる反応であり、したがって、ケトン体は負のエネルギーシグナルとして働き、生殖・摂食やエネルギーのホメオスタシスを調整しているものと考えられた。また、エネルギーセンサーとして考えている後脳の上衣細胞においてケトン体が細胞内カルシウム濃度の上昇を促したことから、ケトン体の濃度も他のエネルギー基質と同様に上衣細胞で感知されている可能性が高いと考えられた。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Moriyama, R.: "Glucoprivation-induced Fos expression in the hypothalamus and medulla oblongata in female rats."Journal of Reproduction and Development. 49. 151-157 (2003)
-
[Publications] Kinoshita, M.: "A rat model for the energetic regulation of gonadotropin secretion : Role of the glucose-sensing mechanism in the brain."Domestic Animal Endocrinology. 22. 65-76 (2003)
-
[Publications] Kondo, J.: "Lactation-associated infertility in Japanese Monkeys (Macaca fuscata) during the breeding season."Zoo Biology. 22. 65-76 (2003)
-
[Publications] Moriyama, R.: "In vitro increase in intracellular calcium concentrations induced by low or high extracellular glucose levels in ependymocytes and serotonergic neurons of the rat lower brainstem."Endocrinology. 145(in press). (2004)
-
[Publications] Kinoshita, M.: "Fourth ventricular alloxan injection suppresses pulsatile luteinizing hormone release in female rats."Journal of Reproduction and Development. 50(in press). (2004)
-
[Publications] 前多敬一郎: "ブルーバックス「生命をあやつるホルモン」"講談社. 238 (2003)