2005 Fiscal Year Annual Research Report
エストロゲン反応性に見られる脳の性差の細胞生理学基盤の解明
Project/Area Number |
14370025
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
佐久間 康夫 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70094307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 昌克 日本医科大学, 医学部, 助教授 (90143239)
木山 裕子 日本医科大学, 医学部, 講師 (60234390)
折笠 千登世 日本医科大学, 医学部, 助手 (20270671)
濱田 知宏 日本医科大学, 医学部, 助手 (90312058)
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Keywords | エストロゲン受容体α / プロモータートランスジェニック / 性的二型核 / EGFP / 内側視索前野 / 分界条床核 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
エストロゲン受容体α(ERα)は、ヒトゲノムでは少なくとも7つのプロモータ配列が同定されるなど、複数のプロモータにより部位・時期特異的な発現制御を受けることが想定されているが詳細は未だ不明である。本研究計画は、ラットのプロモータO/B (Gene Bank Map No.1-2186,2.2kb)によりEGFPの遺伝子(クローンテック社)を発現するトランスジェニック系統を樹立し、ERα陽性ニューロンを可視化して当該プロモータの機能を明らかにするばかりでなく、同定されたニューロンを神経内分泌学的、細胞生理学的研究に供する目的で開始した。幸い計画年度内にトランスジェニックラットの作成に成功し、脳ではERαの存在が免疫組織学的に確認される視索前野ならびに分界条床核のニューロンにEGFPを発現する系統を確立することができた。これらの部位におけるEGFPの発現は卵巣摘除により増加し、エストロゲン投与により減少したことから、エストロゲンによる性腺刺激ホルモン分泌のネガティブフィードバックに関わるニューロンが標識されると結論した。一方、視床下部腹内側核のERα免疫陽性ニューロンには見るべきEGFP発現が起こらず、この部位のERαはプロモーターO/Bの調節のもとにはないと考えられる結果を得た。一連の結果はMol Brain Res 139(1):42-51(2005)に発表したが、引き続き解析を進めたところ、免疫組織学的研究では従来ERαの存在が疑問視され、性分化の機序について議論の絶えなかった内側視索前野の性的二型核(SDN-POA)ニューロンがEGFPを発現しており、免疫組織学的学的にもERα陽性であるとの所見を得た。免疫学的手法による先行研究がERαを検出しなかったのは、SDN-POAが小さな核で、周辺の多数のERα免疫陽性ニューロン群に埋没したためと考えており、ERα分子のみでなく、プロモータの使い分けに注目することで、SDN-POAの形態形成や生理機能など、予期していなかった使用価値があるトランスジェニック系統を得た。今後パッチクランプ法やイオンイメージング法により、同定されたニューロンの細胞生理学的研究に力を注ぐ所存である。
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Research Products
(7 results)