Research Abstract |
TおよびB細胞上にはムスカリンおよびニコチン受容体(それぞれ,mAChRおよびnAChR)が発現している.T細胞活性化因子フィトヘマグルチニン(PHA)は,T細胞においてアセチルコリン(ACh)産生,その産生酵素コリンアセチルトランスフェレース(ChAT)およびM_5 mAChRのmRNA発現を増強する.またAChは,TおよびB細胞上のmAChRおよびnAChRに作用して,カルシウム(Ca^<2+>)シグナリングを誘発する.これらの知見から,免疫細胞におけるmAChRおよびnAChRの役割を明らかにする目的で,M_5 mAChRノックアウト(KO)マウスおよびニコチン(Nc)を連続投与したマウスを用いて,卵白アルブミン(OVA)に対する抗体産生の変化を検討した. 1.マウスにNc(1または2mg/kg, sc, twice daily)を5週間連続投与した.第3週目にOVAで初回免疫し,さらに第4週終了後に追加免疫をした.第4および6週終了時に尾動脈より採血を行ない,抗体価を測定した.Ncの用量依存的にOVA対する抗体価の減弱が観察された.Ncは,脾臓の単核白血球(MNL)におけるChATおよびnAChR α7サブユニットのmRNA発現を有意に減弱させた.胸腺のMNLにおいては,NcはChAT mRNA発現を有意に減弱させたが,α7サブユニットのmRNA発現には影響を及ぼさなかった.これらの結果から,NcはChAT発現を低下させてACh産生を抑制し,α7サブユニット発現を低下させてリンパ球コリン作動系活性を抑制することにより,抗体産生を減弱させた可能性を示唆するものである. 2.M_5 mAChR KOマウスをOVAで免疫し,抗体産生能をワイルドおよびヘテロマウスとの間で,比較検討を行った.M_5 KOマウスの入手に時間を要したため,現在実験を継続中である.
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