2005 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変動物を用いた糖尿病性合併症の成因の研究と遺伝子治療の試み
Project/Area Number |
14370073
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
八木橋 操六 弘前大学, 医学部, 教授 (40111231)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 龍一 弘前大学, 医学部, 助教授 (20260408)
水上 浩哉 弘前大学, 医学部, 助手 (00374819)
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Keywords | ポリオール代謝 / アルドース還元酵素 / グリケーション / AGE / RAGE / 糖尿病 / 末梢神経障害 / 標的治療 |
Research Abstract |
私どもは、糖尿病合併症の発症におけるポリオール代謝の関与を明確にする目的から、この代謝の律速酵素であるアルドース還元酵素(AR)を過剰発現するトランスジェニックマウス(Tg)、およびARを全く発現しないARノックアウトマウス(-KO)を用い、これらのモデルマウスをストレプトゾトシンにて糖尿病にし、ヒト糖尿病類似の末梢神経障害が起こるか否かを検討した。その結果、AR-Tgでは糖尿病状態で、対照のワイルド(WT)糖尿病マウスに比し、より高度の神経伝導速度遅延、感覚(痛覚)鈍麻を認めた。形態学的にも、神経線維の高度萎縮、生化学的には細胞内シグナルとしてのNa, K-ATPase低下、Protein kinase C(PKC)活性低下をみた。すなわち、AR-Tg糖尿病マウスでヒト類似の末梢神経障害の存在を認め、かつその機構として細胞内シグナル異常が中枢にあることが示された。これに対し、AR-KOでは糖尿病にした場合、軽度の神経速度遅延、PKC活性異常にとどまっており、神経障害の程度が低いことが示された。一方、高度高血糖では、AR-KOの神経障害もWTと同程度であることが示され、ポリオール代謝以外の系も作動していることが示された。次に、合併症発症における糖化の関与を明らかにする目的で、AGE受容体であるRAGEを血管内皮に過剰発現するTgを用いて、糖尿病状態での神経障害について検討した。その結果、RAGE過剰発現マウスではWTに比し同程度の高血糖状態でもより強い神経伝導速度の遅延をみた。形態学的神経線維変化はRAGE過剰発現マウス、WTで差を認めなかった。これらの結果から、糖尿病合併症として代表的な神経障害の成立にはポリオール代謝亢進とAGE-RAGE作用が協調して作動していることが考えられ、神経障害の治療、予防にはこれらの因子を標的として阻害することが有用と考えられた。
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Research Products
(3 results)