Research Abstract |
タイト結合とヒト疾患の関係を検討し,以下の点を明らかにした. 1.タイト結合の転写レベルの制御 マウステラトーマF9細胞に転写因子HNF-4αを発現させると,occludin, claudin-6, claudin-7のタイト結合蛋白の発現が誘導され,タイト結合機能が上昇した.しかしアドヘレンス結合蛋白E-cadherinとnectinの発現は変化しなかった.一方,HNF-4αの発現によりF9細胞にCDKs阻害因子p21が誘導され,細胞の分裂が抑制された. 2.血管内皮細胞のタイト結合 血管内皮細胞にclaudin-5の発現を誘導すると,機能的なタイト結合が再構成された.さらにPKAが,claudin-5タンパクを標的分子としてタイト結合のバリア機能を増強し,claudin-5配列内のThr^<207>がTriton-X100非可溶性claudin-5の量やタイト結合の機能に深く関与していた. 3.肝細胞のタイト結合 肝再生過程では,ギャップ結合とタイト結合がダイナミックに変化する.部分肝切除と初代培養肝細胞を用いて検討したところ,この変化は,おもにp38MAPキナーゼシグナルによって制御されていた.タイト結合蛋白occludinを欠損したマウスから肝細胞を分離し,occludinの機能を検討したところ,この肝細胞では生存シグナルの伝達が低下し,アポトーシス刺激に感受性が高かった. 4.その他 活性化raf-1は,タイト結合蛋白の発現を低下させ上皮細胞を線維芽細胞様形態へと変化させること,ヒト子宮内膜癌が脱分化するに従い,occludinの発現が低下すること,ヒト口蓋扁桃のタイト結合発現を調べたところ,陰窩上皮に特有なclaudin種を発現していた.
|