2004 Fiscal Year Annual Research Report
消化器癌治療への応用をめざした生存シグナル活性化機構の解明
Project/Area Number |
14370182
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐々木 裕 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (70235282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺崎 久泰 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (50381009)
永濱 裕康 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (60381000)
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Keywords | 生存シグナル / アポトーシス / 肝がん / Akt / PKA / p38MAPK / Bcl-2 / 抗がん剤 |
Research Abstract |
Fasリガンド、TNFα、抗がん剤、あるいは放射線などからの死のシグナルが、さまざまな機序でcaspase cascadeを活性化することによりアポトーシスがもたらされる。このcaspase cascadeの活性化を調節するものが、インスリンやIGF-1などからの生存シグナルである。生存シグナル伝達分子であるAktやPKAはBcl-2ファミリーの中でアポトーシス促進的に働くBADを燐酸化し、アポトーシス抑制的に働くBcl-2/Bcl-XLとの複合体より解離させる。その結果、Bcl-2/Bcl-XLがミトコンドリアからのチトクロームCの遊出を阻害してcaspase cascadeの活性化を抑える。 ヒト肝がん組織での解析では、生存シグナル系であるAktやPKAの活性が非がん部に比し有意に上昇し、アポトーシス最終実行分子であるcaspase 3の活性が低下していることを、我々は明らかにした。さらにヒト肝がん細胞株における生存シグナル系の検討では、生存シグナル阻害剤の添加によりcaspase 3活性は上昇し細胞はアポトーシスに陥った。さらに生存シグナル阻害剤との併用により抗がん剤の殺細胞効果が増強した。以上の結果より、生存シグナルの活性化は肝がん細胞のアポトーシス抵抗性の一翼を担っていることを見出した。 一方、死のシグナル伝達分子であるMAPK super-familyの1つであるp38MAPKは、生存シグナルとは逆にヒト肝がん組織では非がん部に比して有意にその活性が低下していた。またMKK6の恒常的活性体を用いてp38MAPKを活性化すると、肝がん細胞株をアポトーシスに誘導しうることを報告した。さらに抗がん剤の添加により細胞内に活性酸素が発生させると、p38MAPKの活性化を介して肝がん細胞株にアポトーシスを惹起しうることを見出した。 以上の成績から、活性化した生存シグナル系と減弱したp38MAPK活性を標的にして機能修飾を行うことで、新たな肝がん治療法の可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)