肺サーファクタント蛋白質とToll様受容体による自然免疫生体防御と臨床応用

2002 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14370198
• Research Institution: Sapporo Medical University
• Principal Investigator: 黒木 由夫 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70161784)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 岩城 大輔 札幌医科大学, 医学部, 助手 (10315492) ; 佐野 仁美 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80295344) ; 高橋 弘毅 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (60231396) ; 高橋 亨 札幌医科大学, 医学部, 助手 (40347159)
• Keywords: 肺サーファクタント / SP-A / SP-D / コレクチン / 自然免疫 / Toll様受容体 / ペプチドグリカン / ザイモザン

Research Abstract

本研究は、ペブチドグリカン(PGN)やザイモザンなどの菌体成分、および、RSウイルス、非定型抗酸菌、ブドウ球菌や肺炎球菌と肺コレクチンとの相互作用、および、これらの病原微生物リガンドが惹起するToll様受容体(TLR)シグナリングと炎症反応に対するコレクチンの影響、さらに、マクロファージによる病原微生物貪食に及ぼすコレクチンの影響とその分子機構を明らかにすることを目的として遂行された。以下に、本年度の実績を要約する。
1.肺コレクチンのSP-Aは(PGN)とザイモザンに結合せず、これら菌体成分はSP-Aのリガンドでないことが示された。非定型抗酸菌、ブドウ球菌、肺炎球菌に対してはSP-Aは濃度依存性の結合を示した。
2.SP-AはそのリガンドでないPGNとザイモザンによって惹起されるTNF-α分泌を有意に抑制したが、リガンドである菌体により惹起されるサイトカイン分泌に対しては抑制作用を示さなかった。
3.SP-Aとマクロファージをpreincubationし、SP-Aを除去した後も、SP-Aによるサイトカイン分泌抑制作用は持続したので、SP-Aとマクロファージとの相互作用が重要であると示唆された。
4.TLR2-トランスフェクトHEK293細胞において、SP-AはPGNまたはザイモザン惹起NF-κB活性化を有意に抑制した。
5.SP-Aは組換え可溶型TLR2細胞外ドメイン(sTLR2)に濃度依存性の結合を示した。リガンドブロットにより、SP-DもsTLR2に結合することが明らかにされた。
6.SP-Aは、PGNあるいはザイモザンとsTLR2との結合を有意に抑制した。
7.SP-AはTLR2細胞外ドメインに結合することによって、SP-AリガンドではないPGNやザイモザンとTLR2との相互作用を変化させ、そのシグナルを抑制、TNF-α分泌を抑制していると考えられる。
8.SP-Aは、RSウイルスのG蛋白とF2蛋白に結合して、RSウイルスのHEp2細胞への感染、ウイルスの細胞への取り込み、ウイルス刺激によるIL-8分泌を有意に増加させた。
9.SP-Aは、肺胞マクロファージによる非定型抗酸菌、ブドウ球菌と肺炎球菌の取り込みを有意に増加させ、菌体のクリアランスに寄与していることが示された。

Research Products

• [Publications] Murakami S: "Surfactant protein A inhibits peptidoglycan-induced TNF-α secretion in 937 cells and alveolar macrophages by direct interaction with Toll-like receptor 2"J Biol Chem. 277. 6830-6837 (2002)
• [Publications] Iwaki D: "The extracellular Toll-like receptor 2 domain directly binds peptidoglycan derived from staphylococcus aureus"J Biol Chem. 277. 24315-25320 (2002)
• [Publications] Greene KE: "Serum surfactant protein A and D as biomarkers in idiopathic pulmonary fibrosis"Eur Repir J. 19. 439-446 (2002)
• [Publications] Takezawa C: "Assesment of differentiation in adenocarcinoma cells from pleural effusion by peripheral airway cell markers and their diagnostic values"Lung Cancer. 38. 273-281 (2002)
• [Publications] 黒木由夫: "サーファクタント蛋白質-D(SP-D)ノックアウトマウス"分子呼吸器病. 6. 409-414 (2002)
• [Publications] 黒木由夫: "サーファクタントと自然免疫"呼吸. 21. 1065-1075 (2002)
• [Publications] 黒木由夫: "気道における自然免疫生体防御-生体防御レクチンとエンドトキシン受容体-"気管支学. 24. 595-602 (2002)
• [Publications] Sato M: "Direct binding of Toll-like receptor 2 to zymosan, and zymosan-induced NF-κB activation and TNF-α secretion are downregulated by lung collectin surfactant protein A"J Immunol. (In press).
• [Publications] 黒木由夫: "肺コレクチンによる自然免疫生体防御-CD14・TLRとの相互作用を介する細胞応答制御"医学のあゆみ. (印刷中).
• [Publications] 黒木由夫: "Annual Review 免疫2003:TLRによるリガンド認識機構"中外医学社. 285 (2002)