2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14370219
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
南野 徹 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (90328063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小室 一成 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30260483)
高野 博之 千葉大学, 医学部附属病院, 助手 (60334190)
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Keywords | アンジオテンシンII / Ras / 血管老化 / p53 / p21 / 動脈硬化 / 動脈瘤 |
Research Abstract |
アンジオテンシンII(以下AII)が動脈硬化を促進することは、AII受容体拮抗薬などを用いた臨床研究によって示されているが、そのメカニズムについてはよくわかっていない。我々は以前より、細胞レベルの老化が血管老化・動脈硬化の病態生理に重要であることを示してきた。その機序の一つとして、過剰な増殖刺激によるRasの活性化が血管細胞の老化を誘導し、炎症性サイトカインの発現亢進とそれにともなうマクロファージの集簇などによって動脈硬化を促進していることを明らかにした。AIIはRasの活性化因子であることから本研究では、AIIによる血管細胞老化が動脈硬化進展に関与しているかどうかを検討した。ヒト血管平滑筋細胞において、AIIはp53の発現や転写活性を上昇させ、そのターゲット分子で細胞分裂抑制因子であるp21の発現を誘導した。さらに、AIIによって細胞老化のマーカーであるsenescence-associated β-gal活性が増加したことから、AIIはp53/p21経路を介して血管細胞老化を誘導していることが示唆された。ApoE欠損マウス(apoEKO)にAIIを投与すると、血管におけるp21の発現は亢進し、細胞レベルの老化が促進された。AIIの投与によって動脈硬化は進展し、動脈瘤の形成や破裂による死亡が観察された。そこで細胞レベルの老化を抑制することによってAIIによる動脈硬化進展を阻止できるかどうかを検討するため、apoE/p21二重欠損マウス(DKO)を作成し同様にAIIを投与した。その結果、DKOではapoEKOに比べて老化した血管細胞は減少し、AIIによって誘導される炎症性サイトカインやメタロプロテアーゼ活性の増加が抑制されていた。また、DKOではapoEKOに比べて動脈瘤の形成や動脈瘤破裂が著明に抑制され、有意な生存率の上昇を認めた。これらの結果から、AIIはp53/p21経路を介して血管細胞の老化を促進し、動脈硬化病変の進展に関わっていることが明らかとなった。また、細胞老化シグナル制御による抗老化治療が、血管老化・動脈硬化に対する新しい治療のストラテジーとなる可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)