血管内皮細胞機能不全におけるシグナル伝達と治療戦略に関する研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 14370232
• Research Institution: Fukushima Medical University
• Principal Investigator: 丸山 幸夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90004712)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 斎藤 修一 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (20274962) ; 矢尾板 裕幸 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50264544) ; 石橋 敏幸 福島県立医科大学, 医学部, 助教授 (00223024)
• Keywords: 血管内皮細胞機能不全 / RhoA / 単球 / 組織因子 / PAI-1 / NF-kB / eNOS / 酸化LDL

Research Abstract

本課題は血管内皮細胞機能不全におけるシグナル伝達系を特に低分子GTP結合蛋白質Rho活性化の観点から解明し、内皮機能不全の治療戦略を検討したものである。本年、血管内皮細胞への単球接着系、酸化LDL添加、トロンビン刺激によるRhoA活性化と各種遺伝子発現との関連について以下のような研究成果が得られた。
ヒト末梢血単球のヒト冠動脈由来血管内皮細胞への接着系において、単球接着により速やかに内皮細胞のRhoAが活性化し、引き続きNF-kBのリン酸化が誘導された。同時に施行したプロモーターアッセイやWestern法により、単球接着により内皮細胞の組織因子発現が転写レベルで増強した。血管内皮細胞にドミナントネガティブRhoA遺伝子を導入したところ、単球接着によるNF-kBのリン酸化と組織因子発現増強は阻止された。以上のことより、単球接着による内皮細胞での組織因子発現増強にはRhoA活性化/NF-kBリン酸化が重要であることが示された(Arteriscler Thromb Vasc Biol.2003;23:681-687)。また、単球接着による内皮細胞でのPAI-1発現にCa^<2+>シグナルが重要であり、そのCa^<2+>シグナルにゲラニルゲラニルトランスフェラーゼIを介するRhoA活性化が関与していることも判明した(投稿中)。酸化LDLは内皮細胞のeNOS発現低下を誘導しその調節は転写後であり、同時に、酸化LDLはRhoAを活性化した。C3 exoenzymeやドミナントネガティブRhoA遺伝子導入によりRhoAを不活性化すると、酸化LDL誘導によるeNOS発現低下は阻止された。これらのことより、血管内皮細胞のeNOS発現調節にRhoA活性化は重要であることが示された。さらに興味深いことは、酸化LDLによるRhoA活性化とeNOS発現低下がmatrix metalloproteinases(MMPs)の阻害薬にて抑制された。このことは、酸化LDL刺激によるRhoA活性化の上流に膜結合形のMMPが何らかの関与をしていることを示唆している。さらに、トロンビン刺激によるeNOS発現にトロンビン受容体PAR1/ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼI/RhoA活性化のシグナルが重要であることを見い出した。これらの結果は昨年のアメリカ心臓学会(AHA)、本年の日本循環器学会総会にて発表し、現在投稿準備中である。

Research Products

• [Publications] Ishibashi T, Sakamoto T, Maruyama Y et al.: "Integral Role of RhoA activation in monocyte adhesion-triggerted tissue factor expression in endothelial cells."Arterioscierosis Thrombosis, and Vacsular Biology. 23・5. 681-687 (2003)
• [Publications] Sato H, Yaoita H, Maehara K, Maruyama Y: "Attenuation of heart failure due to coronary stenosis by ACE inhibitor and angiotensin receptor blocker."Am J Physiol Heart Circ Physiol.. 285・1. 359-368 (2003)
• [Publications] Aikawa K, Saitoh S, Maruyama Y et al.: "Effects of antioxidants on coronary microvascular spasm induced by epicardial coronary artery endothelial injury in pigs."Coronary Artery Disease. 15・1. 21-30 (2004)
• [Publications] 石橋敏幸, 丸山幸夫: "血管内皮細胞機能不全とRhoA活性化"血管. 26・4. 135-141 (2003)
• [Publications] 石橋敏幸, 阪本貴之, 大河原浩, 杉本浩一, 坂本信雄, 横山恵子, 寺本民生, 丸山幸夫: "ピタバスチンは酸化LDL存在下において単球および血管内皮細胞共培養系における組織因子発現を抑制する"Therapeutic Research. 24・9. 1732-1738 (2003)
• [Publications] 石橋敏幸: "血管内皮細胞機能不全と血栓形成性:RhoA活性化の関与"Therapeutic Research. 24・8. 1483-1489 (2003)