2004 Fiscal Year Annual Research Report
HSP90シャペロンをターゲットとした放射線増感と腫瘍内微小環境因子の影響
Project/Area Number |
14370283
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Research Institution | Ibaraki Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
窪田 宜夫 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (20046139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鹿野 直人 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助手 (80295435)
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Keywords | Hsp90 / geldanamycin / PI3K / Akt / 放射線増感 / アポトーシス / スフェロイド |
Research Abstract |
ストレス蛋白質の一種であるHSP90は分子シャペロンとして働いていることが知られており、細胞の増殖、分化、シグナル伝達に関与する分子と結合し、それらの分子の細胞内での機能・局在・安定化に大きく関与している。HSP90阻害剤であるgeldanamycin(GA)がHSP90に結合すると、HSP90と蛋白質の複合体から蛋白質が遊離しやすくなり、その結果、細胞内のユビキチン・プロテアソーム系で分解され、その蛋白質が関与するシグナル伝達系が遮断される。 我々はヒト腫瘍細胞では、GAと放射線の併用により放射線感受性が増強されることを見いだし、その放射線増感効果のメカニズムは、PI3K/Akt経路の抑制が関与する場合としない場合があることを報告した。Aktはさまざまな基質をリン酸化し、アポトーシスを起こさないような作用があることが知られている。ヒト腫瘍細胞でGAによりAktの活性が大きく抑制される細胞では、大きな放射線増感が見られ、それにはアポトーシスの誘発が大きく係っていることが見いだされた。さらに検討を進め、ヒト腫瘍細胞で見られるGAによる放射線増感効果は、ヒト正常細胞では極めて小さいこと、その理由として腫瘍細胞ではAktの遺伝子増幅などで活性が高まっているが、正常細胞ではAktの活性が低く、PI3K/Akt経路があまり働いていないためであることを見いだした。平成16年度は臨床応用可能なGAの誘導体である17-AAGと放射線の併用効果について、ヒト頭頚部扁平上皮癌由来の腫瘍細胞を用い、単層培養系とヒト腫瘍モデルである多細胞スフェロイドの系で放射線との併用効果について検討した。両者の併用により、放射線抵抗性腫瘍細胞ではリン酸化Aktの抑制により、アポトーシスの増加が見られ、放射線感受性の高い腫瘍細胞ではネクローシスからアポトーシスへの細胞死のモードが変わる現象が見られた。多細胞スフェロイドの実験では単層培養と同様に放射線と17-AAGの併用により放射線増感効果が観察され、リン酸化Aktの発現の抑制が免疫染色で見られ、アポトーシス細胞の増加がTunel法で観察された。今回の研究により17-AAGは放射線の増感剤として臨床の放射線治療で期待できると考えられる。
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Research Products
(6 results)