2002 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール・薬物依存の病態と治療に関するポストゲノム研究
Project/Area Number |
14370292
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
齋藤 利和 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50128518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 仁 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70226702)
山本 恵 札幌医科大学, 医学部, 助手 (90347170)
小澤 寛樹 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (50260766)
加藤 忠史 理化学研究所, 脳外科総合研究センター・精神疾患動態研究チーム, チームリーダー (30214381)
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Keywords | アルコール / cAMP / Ca^<2+> / Ca^<2+>-結合蛋白質 / NFκB / CREB / アネキシンIV / SH-SY5Y細胞 |
Research Abstract |
アルコール・依存形成薬物は、細胞内cAMP・Ca^<2+>を介する細胞内情報伝達系に異常をもたらす。すなわちアデニル酸シクラーゼ(AC)の発現減少によるcAMP濃度の低下、Ca^<2+>チャネル亢進によるCa^<2+>濃度上昇が細胞障害(アポトーシス)を誘導する。これに関する本研究の結果は、次のように要約される。 1.すでに培養細胞で、アルコール濃度に依存して、Ca^<2+>受容体アネキシンIVの発現が増大し、転写調節因子NFκBの活性化が起こることを明らかにした。本研究で、Ca^<2+>結合部位に変異を加えた変異体を用いた、レポータージーンアッセイから、アネキシンIVのCa^<2+>1結合部位がNFκBの活性化に必須であることを明らかにした。 2.NFκBは細胞質でIκBと複合体を形成し不活性化されているが、消化酵素によるIκBの分解で遊離したNFκBは核内に移行し活性を持つ。アネキシンIVによるNFκBの活性化は、IκBの分解亢進によることが判明した。また、アネキシンIVはNFκBと結合することも示され、NFκBの活性化に係わる可能性がある。 3.神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞は、レチノイン酸で分化する細胞で、ニューロンのモデルとして広く使われる。この細胞を用いて、アルコールによる細胞障害性を検討した結果、未分化の細胞は、分化した細胞より強く障害を受けることがわかった。また、この障害で転写因子CREB活性が減弱することがわかった。 4.SH-SY5Y細胞の分化で、グルココルチコイド受容体(GR)の発現が高まる。デキサメサゾンによるストレス障害は逆に、分化した細胞で大きくなることがわかった。 以上のように、アルコール・依存形成薬物による細胞障害性の分子機構の一端が解明された。また、細胞の分化に及ぼすアルコールの影響が示され、胎児アルコール症候群のモデルになる可能性があり、更に分子機構に関する検討を進めている。 さらにGeneChipによる研究に関してはスタンレー脳バンクより得た、アルコール依存症患者3名、コントロール2名、その他の精神疾患4名の死後脳(前頭前野)から、total RNAを抽出し、DNAマイクロアレイ(Affymetrix社、GeneChip Hu95A)を用いて、遺伝子発現の網羅的解析を行った。正常群と比較して、アルコール依存症のみで1.8倍以上に発現量が変化している遺伝子を調べたところ、ミエリン関連遺伝子など、一群の遺伝子の発現量変化を見出した。現在、これらの遺伝子の発現変化について、多数例のアルコール依存症患者および健常者の死後脳を用いて、RT-PCR法により確認を行っている。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Sohma, H.: "Ethanol-induced augmentation of annexin IV expression in rat C6 glioma and human A549 adenocarcinoma cells"Alcohol. Clin. Exp. Res.. 26. 44S-48S (2002)
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[Publications] Ohkawa, H.: "Ethanol-Induced Augmentation of Annexin IV in Cultured Cells and the Enhancement of Cytotoxicity by Overexpression of Annexin IV by Ethanol"Biochim. Biophys. Acta. 1588. 217-225 (2002)
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[Publications] 相馬 仁: "アルコールによる細胞内Ca^<2+>情報伝達素子の発現変化と細胞障害性"アルコールと医学生物学. 22. 4-9 (2002)
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[Publications] 大川 浩子: "痴呆の分子マーカー-血中に出現するカルシウム結合蛋白質アネキシンを指標にして-"老年精神医学雑誌. 14. 227-235 (2003)
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[Publications] 齋藤 利和: "アルコール依存症のメカニズム"月刊精神科. (In press).
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[Publications] 齋藤 利和: "アルコール依存症の生物学的研究とその臨床的応用"精神神経学雑誌. 104. 191-200 (2002)
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[Publications] 齋藤 利和: "アルコール・薬物関連障害の診断・治療ガイドライン"株式会社じほう. 237 (2002)