2002 Fiscal Year Annual Research Report
腎尿細管の尿酸輸送体の同定と腎性低尿酸血症の遺伝子解析及び高尿酸血症治療薬の開発
Project/Area Number |
14370318
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丹羽 利充 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教授 (20208268)
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Keywords | 尿酸 / トランスポーター / URAT1 / 腎性低尿酸血症 / 遺伝子解析 |
Research Abstract |
プリン代謝産物である尿酸は、痛風(高尿酸血症)の原因であり、最近は高血庄、心血管疾患の独立した危険因子であることが議論されている。一方尿酸は、その神経保護作用から明らかなように、様々な病気のプロセスに関与する生体内活性酸素種のスカベンジャーである。ヒトは変異性の遺伝子サイレンシングにより肝臓のウリカーゼが進化の過程で欠失している上に、効率的な腎臓の尿酸再吸収システムを有するので、ヒトの血中には他の哺乳類よりも高いレベル(200-500μM)の尿酸が存在する。また血中尿酸値と各種哺乳類の寿命の相関も示され、ヒトがその頂点に位置しているのは興味深い。ヒトの腎臓における尿酸動態を司る分子実体は、多様な尿酸輸送系と種間の差の理解が困難であることから明らかになっていない。ヒトゲノム概要配列を利用して、長い間存在が想定されていたヒト腎臓の尿酸-陰イオン交換輸送体(SLC22Al2によってコードされるURAT1)が最近同定された。URAT1は12回の膜貫通領域をもつ膜タンパクで、同じく腎臓に発現している有機アニオン(薬物)トランスポーター(organic anion transporter : OAT)ファミリーに属する分子である。URAT1は、様々な内因性アニオンと相互作用し、これらのアニオンの生体内あるいは細胞内濃度がURAT1を介して血中尿酸濃度を制御していることが予想される。URAT1は尿酸排泄促進薬(痛風薬)と尿酸再吸収促進薬(尿酸を上昇させる)の標的分子であり、新たな痛風薬の創薬ターゲットを提供する。また特発性腎性低尿酸血症(血中尿酸の異常低下)の患者はSLC22Al2に欠陥がある証拠が得られ、本遺伝子の生物学的重要性が明らかとなった。
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