2003 Fiscal Year Annual Research Report
肥大・不全心における不整脈源性チャネルのリモデリングとその分子機構
Project/Area Number |
14370404
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平岡 昌和 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80014281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 仁 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (70088863)
平野 裕司 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (00181181)
川野 誠子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (00177718)
国安 明彦 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助教授 (90241348)
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Keywords | チャネルリモデリング / 心筋症ハムスター / 一過性外向きKチャネル / L型Caチャネル / HERGチャネル / 蛋白チロシン燐酸化 / チャネル蛋白発現 / HERG電流密度減少 |
Research Abstract |
心肥大や心不全における不整脈源性イオンチャネルのリモデリングに関する分子機構の解明を試みた。一過性外向きKチャネルは肥大や不全心において機能と発現の低下をきたすこと、心室の心外膜側・心内膜側での発育が異なること、などは良く知られているが、肥大や心不全でその分布と機能の違いがどのように変化するかは不明である。そこで、遺伝性心筋症モデルとしてよく使用されるハムスターのうち、J-2-K心筋症ハムスターを用いて外膜側・内膜側での活動電位の頻度依存性と一過性外向きKチャネル、内向き整流Kチャネル、L型Caチャネルの電流密度変化を健常の対象ハムスターと比較検討した。この動物モデルは、拡張型心筋症から心不全を呈するタイプで、同一系で心筋症を発症しない動物も得られるため、これを対象群とした。対象群からの心室筋細胞では、刺激頻度延長により活動電位持続時間(APD)が延長、心内膜側のAPDは外膜側より各刺激頻度(0.1-6.0Hz)とも延長していた。心筋症(CM)では、外膜側のAPDが内膜側より延長し、頻度依存性変化が消失した。これらの変化は一過性外向きKチャネルブロッカー投与により消失した。一過性外向きKチャネル電流はCMでの心外膜心筋細胞で著名に減少し、不活性化からの回復も遅延を認めたが、心内膜側ではこのチャネル電流密度・機能に変化を認めなかった。内向き整流Kチャネルは、CMハムスターの心外膜側でのみ低下し、L型CaチャネルはCMにおいては心外膜側・内膜側ともに低下していた。 HERGはIkr電流をコードし活動電位再分極に重要な役割を果たすチャネルであるが、肥大や心不全での変化とこれに関与する分子メカニズムは良くわかっていない。肥大や心不全において蛋白チロシンリン酸化が細胞内シグナル伝達系として重要な働きをしているが、HERGへの修飾効果に関しては不明である。そこで、HEK293細胞への発現系を用いて非受容体タイプの蛋白チロシンカイネース(PTK)であるc-SrcとHERGを共発現させ、HERGチャネル蛋白の発現とチャネル機能への修飾を検討した。その結果、c-Srcはリン酸化を介してHERGの未熟蛋白(135KDa)を著名に増加させ、成熟蛋白(155KDa)のリン酸化により電流密度の低下、電流活性化曲線のシフト、活性化時間の遅延をもたらした。すなわち、PTKリン酸化はHERGチャネルの発現については未熟蛋白を増加させ、成熟蛋白にも作用して電流密度の低下、活性化電位の変化、などの機能を変化させることが判明した。本研究によりこれまで不明であった、HERG/Ik r電流の肥大・心不全での変化とその細胞内シグナル系の関与の一端が明らかとなった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kocic I, Hirano Y, Kawano S, Hiraoka M.: "Regional and frequency-dependent changes in action potentials and transient outward K+ currents in ventricular myocytes from J-2-K cardiomyopa."Basic Research in Cardiology. 98. 367-379 (2003)
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[Publications] Kawano S, Otsu K, Shoji S, Yamagata K, Hiraoka M.: "Ca^<2+> oscillations regulated by Na^+-Ca^<2+> exchanger and plasma membrane Ca^<2+> pump induce fluctuations of membrane currents and potentials in human mesenchy."Cell Calcium. 34. 145-156 (2003)
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[Publications] Wu L-M, Orikabe M, Hirano Y, Kawano S, Hiraoka M.: "Effects of Na^+ channel blocker, pilsicainide, on HERG current expressed in HEK-293 cells."J Cardiovasc Pharmacol. 42. 410-418 (2003)
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[Publications] Hirano Y, Hiraoka M.: "Ca^<2+> entry-dependent inactivation of L-type Ca current : A novel formulation for cardiac action potential models."Biophys J. 84. 696-708 (2003)
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[Publications] Kuniyasu A, Kaneko K, Kawahara K, Nakayama H.: "Molecular assembly and subcellular distribution of ATP-sensitive potassium channel proteins in rat hearts."FEBS Letter. 552. 259-263 (2003)
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[Publications] 平岡昌和: "肥大心でのチャネルリモデリング"心臓. 34. 891-911 (2002)