2004 Fiscal Year Annual Research Report
サルES細胞からのドーパミン神経誘導およびサルパーキンソンモデルへの移植
Project/Area Number |
14370431
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 淳 京都大学, 医学研究科, 講師 (10270779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中辻 憲夫 京都大学, 再生医学研究科, 教授 (80237312)
笹井 芳樹 理化学研究所, CDB・細胞分化器官発生研究グループ, グループディレクター (20283616)
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Keywords | ES細胞 / パーキンソン病 / 細胞移植 / ドーパミン産生ニューロン |
Research Abstract |
カニクイザルES細胞をPA6という間質細胞の上で約2週間培養し、さらに細胞をPA6から剥がしてFGF2を含む無血清培地で培養すると細胞は神経幹細胞の状態で増殖した。この細胞を1週間培養したのちに分化誘導すると、TH(チロシン水酸化酵素)陽性のドーパミン神経や、ChAT陽性のコリン神経、GABA陽性のGABA神経などが出現した。この際、ドーパミン神経は全神経の約8%であるが、sphere培養の時期にFGF2に加えてFGF20も添加することによって、ドーパミン神経の割合は約24%にまで増加した。 MPTPの静脈注射によってカニクイザルのパーキンソン病モデルを作成し、両側線状体にPA6およびFGF2/FGF20で処理したES細胞を移植した。カニクイザルの姿勢、運動量、振戦などをスコア化し、培養液のみを注入したコントロール群と経時的に比較検討したところ、移植群においては徐々にスコアの改善がみられるようになり移植後10週目に有意な改善が認められた。14週後まで観察したが、この改善は維持された。PET studyではコントロール群においてF-dopaの取り込みが低下しているのに対し、移植群においては有意な上昇がみられ、移植細胞がドーパミン神経として機能していることが確認された。その後脳切片の染色を行ったところ、移植群の線条体においてTH陽性細胞やDAT(ドーパミントランスポーター)陽性細胞が確認された。また、少なくとも14週間後の観察においては分裂細胞(Ki67陽性細胞)や腫瘍形成は認められなかった。 カニクイザル由来ES細胞から成熟した中脳ドーパミン産生神経が誘導されること、この前駆細胞移植によってカニクイザルパーキンソン病モデルの行動が改善したことは、同じ霊長類であるヒトにもこの方法が適応できる可能性を示唆する。ただし、今回は約3か月という短期経過観察であるので、実際の臨床応用の前には1年以上の長期経過観察によって、その効果と安全性の検証が行われなければならない。
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Research Products
(2 results)