2003 Fiscal Year Annual Research Report
体外循環時の脳高次機能障害モニタリングと理想的脳管理法の確立
Project/Area Number |
14370491
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
上村 裕一 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30211189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
當房 和己 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (30325807)
垣花 泰之 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (20264426)
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Keywords | 近赤外分光法 / S-100β蛋白 / 内頚静脈酸素飽和度 / 体外循環 / モノアミン / 脳高次機能障害 |
Research Abstract |
本研究の目的は、体外循環後に発生する脳高次機能障害を早期に検出するための新たなモニタリング法を確立し、それを基に理想的な周術期脳管理法を構築することである。脳高次機能障害の評価には十分な症例数が必要であり本年度(15年度)は、前年度に引き続き(1)症例の蓄積(データーベースの作成)、(2)本研究で用いる脳モニタリング法の検出感度に関しての評価、を行った。<方法>インフォームドコンセントの得られた体外循環(CPB)下の開心術予定症例において、術中、術後の脳内酸素化状態を近赤外分光法(NIRS)と、内頚静脈酸素飽和度(SjvO2)を用いて連続的に測定するとともに、S-100β蛋白とモノアミン類(GABAとグルタミン酸)を(1)CPB開始前、(2)終了直後、(3)5時間後、(4)24時間後、(5)48時間後に測定し検討した。S-100β蛋白はモノクロナール抗体法で、GABAとグルタミン酸はHPLC法で測定した。脳高次機能は、(1)手術前日、(2)終了7日後、(3)退院時に検査を行った。<結果・考察>体外循環前後のGABA値の有意な変化はみられなかったが、グルタミン酸は体外循環導入後に上昇がみられ、体外循環終了直後に最高値に達した。この傾向はS-100β蛋白と極めて類似したものであった。近年、体外循環中のS-100β蛋白の由来は脳細胞以外であるとの報告が多数見られるようになったが、今回の検討では体外循環中の興奮性アミノ酸(グルタミン酸)が、s-100β蛋白の経時的推移と極めて類似するという、面白い結果が得られた。このことは、上記の物質が体外循環中の脳内の病態を反映している可能性もあり、脳障害との関連も含めて詳細な検討が必要と思われる。次年度は、今回の結果を踏まえた上で、さらに症例数を増やし、脳高次機能障害早期検出のためのモニタリング法に関してNIRS、SjvO2、S-100β蛋白、モノアミンなどの総合的な評価を行う予定である。
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