Research Abstract |
今年度も難聴遺伝子の遺伝子座ならびに遺伝子そのものが多数同定された。2002年12月末の時点で,非症候群性遺伝性難聴で優性遺伝は51遺伝子座,劣性遺伝は39遺伝子座,X連鎖は6遺伝子座が報告され,31個の難聴遺伝子が同定されている。この難聴遺伝子同定において,内耳障害を有するマウスは,マウス内耳がヒト内耳と解剖学的,生理学的に類似し,同一の遺伝子変異で内耳障害が生じるため重要な実験動物となる。 1.Jaokson shakerマウスは,A/J系統由来で,回旋運動,頭部挙上運動,運動過多,難聴を呈し,染色体11番に変異遺伝子をもつ内耳障害の実験動物モデルであるJackson研究所より供与されたこの変異遺伝子を持つC57BL/6Jのマウスを対象にして,聴覚と内耳形態を検討し,原因遺伝子を同定した。ホモ動物は,生後10-14日にて,蝸牛の全回転ならびにどの列にても,大部分の外有毛細胞の感覚毛の配列が障害されていた。一方,内有毛細胞の感覚毛の配列は正常で,内・外有毛細胞の細胞質,求心性ならびに遠心性神経終末は正常に発達していた。この感覚毛の配列障害を来す原因遺伝子は,いまだ機能は不明であるが,細胞骨格に関与し,有毛細胞の信号伝達に役割を有する遺伝子でSans(Scaffold protein containing Ankyrin repeats and SAM domain)と命名した。また,ヒトでは,Usher症候群1Gの原因遺伝子である。 2.ホメオボックス遺伝子と共発現するSix遺伝子のなかで,Six4遺伝子のノックアウトマウスは内耳障害を示さなかったが,関連する他の転写遺伝子のノックアウトマウスでは,内耳発生過程の障害を認め,内耳発生のキーとなる遺伝子を同定した 3.転写因子であるEYA1遺伝子変異を,2例のBranchio-oto症候群で同定した。
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