2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14370745
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井出 利憲 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60012746)
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Keywords | テロメア / テロメラーゼ / 遺伝子発現 / プロテオーム / ウイルスベクター |
Research Abstract |
本研究の目的は、テロメラーゼにはテロメア延長機能とは別に「生殖系細胞や幹細胞の増殖にとって有利な働きを持つ」のではないかという新たな仮説を検証することにある。これは、断片的な実験事実から推測されるが、最近まで予想もされなかったことである。本研究は,テロメラーゼが実際このような機能を持つことを証明して、テロメラーゼを持つ生殖系細胞や幹細胞が、旺盛な増殖能を示す一方で、簡単に癌化するわけではないのは何故かという、長い間の疑問に対する新たな知見を通じて社会的に貢献する。1年目の到達目標はテロメラーゼ遺伝子を導入した細胞が、1)テロメア延長とは別に新たな遺伝子産物の発現をもたらすか、2)発現している遺伝子産物の発現上昇あるいは低下をもたらすか、3)それらはどのようなタンパク質であるかを解析し、4)既知タンパク質であれば、テロメラーゼ発現細胞で共通に見られるかを検証し、5)それが増殖に有利であるかを解析する。このため、テロメラーゼ遺伝子を効率よく導入するためにウイルスベクターによる系を確立して用い、2種類の繊維芽細胞に関して、a.正常細胞(対照)、b.テロメラーゼ遺伝子を含まない空のウイルスを感染させた細胞、c.テロメラーゼ遺伝子を導入して直後のテロメアが延長する前の細胞、d.テロメラーゼ遺伝子を,導入後培養してテロメアが延長した細胞の4種類をそれぞれ用意した。これらの細胞について全細胞タンパク質を二次元電気泳動し、各スポットの濃度を解析し、相対的な濃度が2倍以上変化したスポットを探した。aとbでは変化なく、cでは発現上昇あるいは低下するスポットを、テロメラーゼ遺伝子発現によって変化するものと考えた。a、b、cでは差がなく、dでのみ異なるスポットは、テロメアの延長を介して変化したものと考えた。それぞれについて複数のスポット候補を得て、タンパク質を同定中である。
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