2002 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質の核内レセプターを介する毒性発現機構の解析
Project/Area Number |
14370764
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西川 淳一 大阪大学, 薬学研究科, 助教授 (90218131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 不二雄 独立行政法人国立環境研究所, 環境ホルモンダイオキシン研究グループ, 主任研究員 (30113476)
今川 正良 名古屋市立大学, 薬学部, 教授 (20136823)
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Keywords | 内分泌撹乱物質 / 環境ホルモン / 核内レセプター / 生殖毒性 / エストロゲン |
Research Abstract |
20世紀に人類は10万種類を超える化学物質を創出し、我々はその恩恵を享受してきた。しかし、これら人為的に作られた化学物質は、発癌性や内分泌撹乱作用など,当初予想することが出来なかった弊害をもたらし、ヒトを含めた生態系に脅威を与えている。特に、内分泌撹乱物質は生物の生殖系に影響を及ぼし、野生生物の生殖機能を低下させ、ヒトにおいても精子数の減少を引き起こしているとして危惧されている。これら内分泌撹乱物質の潜在的なターゲットと考えられる核内受容体ファミリーの遺伝子はヒトゲノム上には48種類存在するが、本研究ではすべてのヒト核内受容体について網羅的に内分泌撹乱物質との結合性を調べ、疫学調査や動物実験で得られたデータと比較・検討することにより、新たな内分泌撹乱物質の作用点を明らかにすることを目的として研究を進めている。 今年度は、48種類の核内受容体のうち、リガンドが既に判明している23種類の受容体、ERα、ERβ、AR、PR、GR、MR、RARα、RARβ、RARγ、TRα、TRβ、VDR、RXRα、RXRβ、RXRγ、PPARα、PPARδ、PPARγ、LXRα、LXRβ、FXR、CAR、SXRについて検討した。ヒト由来のmRNAを鋳型としRT-PCRにより核内受容体遺伝子を増幅後、塩基配列を決定したところ、すべてすでに報告のある配列と同じであった。これらの遺伝子を用いてアッセイ系を構築し、それぞれの内因性リガンドに対する応答性を検証後、内分泌撹乱作用が疑われている物質についてその作用を調べた。その結果、アルキルフェノール類はERだけでなく、RARやTRに対し活性を示し、有機スズ化合物はRXRに強い活性を示した。これらの結果は、内分泌撹乱物質はエストロゲン受容体との結合だけでなく、複数の核内受容体に影響を及ぼし、これらの複合した作用が毒性につながることを示唆している。
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