2003 Fiscal Year Annual Research Report
台地・谷地境界域における地下水流動系、湧出形態と硝酸性窒素の自然浄化ゾーン
Project/Area Number |
14380030
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田瀬 則雄 筑波大学, 地球科学系, 教授 (40133011)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 文 千葉商科大学, 商経学部, 助教授 (40275962)
辻村 真貴 筑波大学, 地球科学系, 講師 (10273301)
|
Keywords | 硝酸性窒素 / 地下水汚染 / 浄化 / 脱窒 / 地下水流動系 / 台地 / 谷地 |
Research Abstract |
硝酸性窒素が地下水の環境基準に指定されたが、硝酸性窒素の主要な負荷源が農業活動を中心とした非特定汚染源・面源で、硝酸性窒素の実効的な浄化方法がない。水田や湿地などには自然の浄化機能があるとされており、汚染対策としての役割が期待されている。しかし、湿地などの浄化機能については、必ずしもそのプロセスが明らかになっていない。本研究では、「台地-谷地の地形・地質条件により地下水流動系における浄化ゾーンの位置・範囲が規定され、台地部で汚染された地下水が流出する位置・経路・形態により汚染されたままあるいは浄化されて流出して来るという相違が生じる」という仮説を検証し、その条件・プロセスを明らかにしようとするものである。 硝酸性窒素がある程度高濃度で検出され、数多く観測井を設置できる研究対象地域として、つくば市内に2ヶ所のプロット(台地末端斜面と谷地)を設定し、それぞれ100本余りの観測井・ピエゾメータ(最深12m)を掘削し、地質構造を明らかにし、3次元的な地下水の流動と水質(NO_3^-、Cl^-、SO_4^<2->、HCO_3^-、Na^+、K^+、Ca^<2+>、Mg^<2+>、Fe、Mn、ORP、DO、EC、DOCなど)の変動を観測している。 地下水は、台地部から低地部へ流動するが、谷地の谷頭と末端の流出域で上向きの流れが生じている。谷地の谷頭での上向き流は、高濃度の硝酸イオンを表層部へ輸送する役割を果たしているが、末端部の上向き流は清浄で、還元的な地下水を供給し、一般に浄化に寄与している。 2地域において硝酸性窒素の浄化ゾーンを特定することができた。浄化ゾーンは、末端斜面では砂層とローム層の境界で、谷地では再積成粘土層の直下に谷地に沿って馬蹄形で、薄いシート状に存在していた。 主要な浄化プロセスは有機炭素を電子供与体とする脱窒であると考えられ、硫化物を供与体とする反応はほとんどみられないようである。 なお、地下水流動に関連していると考えられる浄化ゾーンの季節的な伸縮などについては、最終年度に解明する予定である。 また、比較のためカナダの例についても若干検討した。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 田瀬則雄: "硝酸・亜硝酸性窒素による水質汚染の現状と動向"水環境学会誌. 26・9. 546-550 (2003)
-
[Publications] 井岡聖一郎, 田瀬則雄: "地下水帯における硝酸性窒素の自然減衰場"地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会第9回講演集. 294-297 (2003)
-
[Publications] 杉田 文: "畑地地域を流れる小河川への硝酸態窒素の負荷源と流入経路について:カナダ・オンタリオ州ストロベリークリークの例"千葉商大紀要. 41・3. 125-142 (2003)
-
[Publications] 井岡聖一郎, 田瀬則雄: "地下水中の硝酸イオンに対するシルト、粘土層の役害-水理的バリアか生物化学的バリアか-"地下水学会誌. 46・1. 37-50 (2004)
-
[Publications] 田瀬則雄: "硝酸・亜硝酸性窒素による地下水汚染の現状と動向"環境管理. 40・3. 47-55 (2004)
-
[Publications] 菅原洋平, 田瀬則雄: "台地末端部における硝酸イオン浄化ゾーンの3次元分布"地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会第10回講演集. (発表予定). (2004)