2004 Fiscal Year Annual Research Report
エイズ孤児,薬物乱用および少年非行の家庭の役割・機能に焦点をあてた行動疫学的研究
Project/Area Number |
14380039
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
大澤 清二 大妻女子大学, 人間生活科学研究所, 教授 (50114046)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
益本 仁雄 大妻女子大学, 人間生活科学研究所, 教授 (80245349)
笠井 直美 新潟大学, 教育人間科学部, 助教授 (20255243)
綾部 真雄 成蹊大学, 文学部, 助教授 (40307111)
下田 敦子 大妻女子大学, 人間生活科学研究所, 助手 (60322434)
高倉 実 琉球大学, 医学部, 助教授 (70163186)
|
Keywords | エイズ孤児 / 薬物乱用 / 少年非行 / 家庭 / 行動疫学 |
Research Abstract |
近年日本やアジア各地において青少年の薬物乱用やエイズなどの保健行動に関する教育科学的接近が不可欠になっている。我々は特にエイズ孤児、薬物乱用青少年の行動と家庭環境などの相互作用に焦点をあてた課題に取り組んでいる。調査地は定点調査を続けている北タイ山岳地域と日本(埼玉、沖縄)であり、収集した資料を分析して薬物乱用、エイズを行動疫学的に解明している。16年度の分析結果から主たる所見は以下のようであった。 ●北タイ地域では家庭が完全に崩壊してしまっているエイズ孤児の生活、教育環境は極めて厳しい。HIV陽性児も稀ではなく、既に就学年齢に達しており、今も増加傾向にある。一部の学校では普通児と共学となっている。彼らの教育、生活、健康は、経済的には多くを寄付に依存している。今後増加しそうな孤児、HIV陽性児の就学問題は健康問題にともなって重い教育課題である。また、孤児のエイズに関する知識は普通児に比べてやや高く、態度・行動は疾患に対する恐れと、自身の置かれている状況に対する諦念が支配的であるが仏教教育の影響もあって生活の見通しに対しての深刻さは無かった。●成人のエイズに対する態度・行動は一応の知識はあるものの予防的でなく、政府などの健康教育の成果は事実上希薄である。HIV検査の受検者は調査村で皆無であった。陽性判定は貧困、差別に繋がり、検査機関が遠いなどの合理化した理由から受検していない。不治の病でありいずれ死亡するという、近代医療の延命思想と輪廻転生の彼らの信念体系が衝突している。死に対する恐怖心が希薄であって、「死に至る病」に対する態度は近代科学的立場と対立している。これは薬物に対する態度にも反映している。●北タイにおける薬物乱用は、直近2年間の政府の厳しい取締りで急速に減少したが、近過去には高率に常用者が青少年に存在しており(高推定値は12.4%)、売買春春・非行が連鎖して問題を複雑にしている。薬物に関係した家庭や友人を媒介として乱用するケースも多い。家庭と友人に対する対人的なライフスキル教育が有効。また学校から家庭・地域にたいして本人に対する保健指導、生活指導を周囲の協力によって行うことが効果的である。●沖縄I島、全児童生徒調査では、年齢に伴って僅かにエイズ知識は上昇するが、感染経路旨や病理的知識に低い項目が目立ち、誤答は小中高、保護者ともに同一項目に集中する。差別意識は保護者(3,023人)が児童生徒よりも僅かに高かった。
|