2002 Fiscal Year Annual Research Report
教師・保護者と高機能広汎性発達障害を持つ生徒との会話への語用論的アプローチ
Project/Area Number |
14380098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大井 学 金沢大学, 教育学部, 教授 (70116911)
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Keywords | アスペルガー障害 / 高機能自閉症 / 語用論 / コミュニケーション障害 / 会話分析 / 国際情報交換 / 連合王国 |
Research Abstract |
高機能自閉症・アスペルガー障害をもつ生徒と教師・保護者の会話において生じる誤解は、生徒側の言語行為の不適切さと、教師・保護者側の発話に関する生徒側の誤った解釈の一方、または両方によってもたらされていた。それを修復すべく、教師・保護者から生徒側の発話の意図を明確にするよう求めること、及び、教師・保護者側の意図が生徒にとってトランスペラントになるよう発話を修正することが試みられた。 会話における誤解は、生徒側の対人関係についての落胆、被害感をもたらしていた。また、生徒の意図を適切に表現する発話レパートリーの学習を妨げていた。また、教室における授業や家庭内の日課への参加を妨げていた。誤解を修復することによって、教師・保護者との対人関係に改善が見られ、授業や日課への円滑な参加がはかられた。さらに、生徒側の適切な言語行為の習得をもたらした。 これらのプロセスを促すのに、研究代表者による会話のビデオテープ・アナリシスが有効であった。教師・保護者は、生徒の発話をそれがもつ通常の意味で理解しようとして混乱していた。また、教師・保護者自身の発話が生徒に、期待するのとは異なった理解をもたらすことに気づいていなかった。 学校における教師と生徒の会話の分析と、家庭における保護者と生徒の会話の分析を、両者同席のもとに照合できた事例では、生徒側の発話の解釈に関する情報共有がはかられ、適切な言語行為の習得を助ける条件に改善がみられた。また、生徒が体験している会話上の困難の深刻さに関する、教師・保護者側の認識をより確かなものにした。 海外共同研究者との意見交換によつて、高機能広汎性発達障害にともなうコミュニケーション障害に対する、日本語と日本のコミュニケーション文化の特質を踏まえたアプローチを検討する必要が示された。
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Research Products
(1 results)