Research Abstract |
分散システムの構成要素(エージェント)数は既にギガで測られる時代にあり,テラの時代が近づきつつある. この事実を説明するために,我々は本研究を申請した2001年10月当時,ホームページ数を世界人口6.17×10^9と比較し,ホームページ検索エンジンGoogleは1.61×10^9個のホームページを検索可能であり,その数を急速に伸ばしていると述べた.本研究の最終年度に当たる,本報告を記述している2006年3月時点では,ホームページ数は既に2×10^<10>に到達したと言われており,この成長曲線を当てはめると8年後にはテラの時代が現出する. 巨大分散システムの別の例として自律分散機械の例をあげた.小鍛冶たちは10年前に自律分散機械を,機械を構成するユニットの大きさと数の関係から概観し,分子程度の大きさのユニットがアボガドロ数(6.02×10^<23>)個程度集まって構成される機械の可能性をその視野に入れている(「自律分散機械と情報処理」情報処理33,6(1992)). 機械を通常の金属のイメージと結びつけると上記の説明は冗談としか思えないかもしれない. しかし,DNA計算から出発した生体分子の工学的利用に関する研究は,生体分子をユニットとする自動分散機械を研究する生体ナノテクノロジー分野を産み出しており,アボガドロ数程度には至らないが10^<15>程度の個数のユニット数から構成される機械が視野に入りつつある. 電子的および機械的な分散システムを巨大分散システムという統一的な立場から理解し,その制御方法を検討しようとするのが,一貫した我々の基本的立場である.この立場の正しさは,これら2つの分散システムが,センサーネットワークやユービキタスコンピューティングという形で融合しつつあるという事実からも立証される. この基本的立場に立って,本研究では巨大分散システムの安定性を研究して来た.本年度の実施計画に述べた3つの目標,すなわち,1)グラフ上の乱歩の研究,2)Web検索への研究1)の適用,3)自己修復性の研究,を中心に据えたが,本年度は最終年度に当たることから今までの研究の至らない部分も補なった.なお,成果の詳細は報告書として刊行する.
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