2004 Fiscal Year Annual Research Report
新材料メタンハイドレートを用いた高性能パルス中性子減速材の開発
Project/Area Number |
14380229
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鬼柳 善明 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80002202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加美山 隆 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (50233961)
平賀 富士夫 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00228777)
澤村 晃子 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30001316)
金子 純一 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90333624)
古坂 道弘 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60156966)
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Keywords | メタンハイドレート / 中性子減速材 / 中性子非弾性散乱 / 中性子全断面積 / パルス中性子 |
Research Abstract |
メタンハイドレートの中性子断面積の特性を知るために、中性子非弾性散乱実験を行ったが、そのデータ解析をさらに進めた。メタン分子の回転は自由回転に近く、最低レベルを1.1meVとして自由回転モデルで計算することによって、上手く実験でのエネルギーレベルが再現できる。しかし、これだけでは散乱強度を全て説明できなかった。これの起源としてはメタンの氷格子中での並進運動が考えられる。このピークとして4.4meVと7.4meVに大ケージと小ケージに対応すると思われるピークがあることが分かった。これらのピークは実験的に初めて明らかにされたものである。氷の揺動運動には、通常の氷との差が見られたが、全体としては、氷とメタンの中性子断面積を合わせたもので、殆ど近似出来ることが示された。 メタンハイドレートの中性子減速材としての性能を評価するためには、中性子断面積の計算データが必要になる。この物質は特殊であるため、シミュレーション計算用の中性子断面積データは、アルゼンチンの原子力研究所のグラナダ教授が作成したものしかなく、そこから断面積データを入手し、シミュレーション計算を行った。その結果、メタンハイドレートを減速材として使用したときの、中性子スペクトルは、氷のスペクトルに近かったが、これまで報告されている実験結果と比較すると、熱中性子領域におけるスペクトルの盛り上がりが見られなかった。 メタンハイドレートの中性子エネルギースペクトルと放出時間分布の測定を、結合型と非結合型の両方の減速材タイプについて行った。測定温度は最低温度が約34Kであった。結合型減速材においてはスペクトルの形は、既報の氷の実験値に近かった。ピークエネルギーは、メタンや水素が約3meVであるのに対して、約7meVと高くなっていた。そのため、熱中性子領域では強度が高いが、冷中性子領域ではかなり低くなっている。非結合型減速材においても、同様の結果が得られ、水素減速材やメタン減速材よりも特性は劣っていた。また、中性子放出時間は、他の減速材より広い分布を示しており、この観点からも水素減速材などと比べて、劣ることが示された。この結果から、メタンハイドレートは、熱中性子から冷中性子までの広いエネルギー領域でスペクトル強度があまり変化しないという特徴を持つが、冷中性子領域では、強度がメタンとか水素より劣るので、この減速材を冷中性子源として使用するメリットはあまりないと考えられる。これは、減速が良いメタンの効果があまり大きくなく、氷の特徴が主として表れたためと考えられる。 これらの成果は、国際会議International Collaboration on Advanced Neutron Source(4月米国), International Conference on Gas Hydrate(6月ノルウェイ)で発表する予定である。
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Research Products
(1 results)