2002 Fiscal Year Annual Research Report
半導体材料に対する高エネルギーイオン照射効果の「その場」測定
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14380233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅井 圭介 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (60231859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩井 岳夫 東京大学, 原子力研究統合センター, 助手 (30272529)
柴田 裕実 東京大学, 原子力研究統合センター, 助教授 (30216014)
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Keywords | 高密度励起 / イオンビーム / 励起子分子 / Urbach則 / 量子井戸構造 / 発光スペクトル / thermal spike |
Research Abstract |
高エネルギーイオンによる高密度電子励起と、それに伴い誘起される、試料の局所的な構造変化については、これまでに多くの研究者による報告があるにも関わらず、その基礎過程については解明されていない。我々は、この問題に対し励起された電子や正孔、あるいは励起子の輻射緩和による発光スペクトを測定することにより、高密度に付与されたエネルギーのダイナミクスを「その場」で観察することに成功した。 具体的には、多重量子井戸構造を持つ試料中の励起子の高速な輻射緩和を利用することにより、イオンの飛跡近傍に形成される局所高温状態について、初めて実験的に捉えることに成功した。励起子吸収帯の低エネルギー側尾部の形状にUrbach則を適用し、それによって得られた物性定数を用いて、イオン励起による励起子発光帯の低エネルギー側尾部を解析し、励起子近辺の局所温度を求めた。その結果、測定された局所温度は、イオンによる電子励起密度の増加関数であることが分かったが、励起密度の増大に伴って、飽和傾向を示すことが明らかになった。我々は、これが局所高温状態によって誘起された融解現象によるものであると考え、量子井戸構造のバリア層である有機層の構造を変化させて測定を行った結果、観測される「局所融点」が、有機鎖の長さによって異なることが分かつた。また、得られた「局所融点」が、バルクでの融点と比較して非常高いことも明らかとなった。この結果より、局所融解現象が・熱平衡下とは異なる過程で進んでいることが示唆された。他方、低温下においては、励起子分子によるものと思われる発光帯が観測された。このため、試料の温度が、イオンの飛跡近傍におけるキャリアや格子のダイナミクスにどのような影響を与えているかを解析することが今後の課題となる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] M.Koshimizu, K.Shibuya, K.Asai, H.Shibata: "Biexciton Luminescence in the Layered Perovskite-Type Materials Induced by High-Energy Ion Irradiation"Nonlinear Optics. 29. 397-402 (2002)
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[Publications] K.Shibuya, M.Koshimizu, Y.Takeoka, K.Asai: "Scitillation Properties of (C_6H_<13>NH_3)_2PbI_4 : Exciton luminescence of an organic/inorganic multiple quantum well compound induced by 2.0 MeV protons"Nuclear Instruments and Methods B. 194. 207-212 (2002)
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[Publications] M.Koshimizu, K.Shibuya, K.Asai, H.Shibata: "Measurement of the Local Temperature in an Ion Track Using Low-Dimensional Quantum Confinement Structure"Radiation Physics and Chemistry. 66. 35-38 (2003)
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[Publications] M.Koshimizu, K.Shibuya, K.Asai, H.Shibuya: "Observation of Local Heating in an Ion Track by Measuring the Ion-Induced Luminescence Spectrum"Nuclear Instruments and Methods B. (in press).