2005 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子消滅法を利用した生体高分子ゲルのナノ空間構造解析
Project/Area Number |
14380235
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西嶋 茂宏 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00156069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 佳伸 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60252582)
誉田 義英 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (40209333)
田川 精一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80011203)
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Keywords | 陽電子 / ナノ空間構造 / 生体高分子 / ゲル化 |
Research Abstract |
生体高分子の代表として、コラーゲンの熱変性物質であるゼラチンに注目した。生体高分子の特徴は水を含有したゲル材料であることである。そこで生体高分子に含有される水の構造を陽電子消滅法(PALS)を利用した解析を実施した。陽電子消滅法のみならず示差走査熱量測定(DSC)を併用することで、生体高分子に強く結合している水(拘束水)と結合していない水(自由水)の量を分析した。PALSでは、水の微構造をDSCでは水の状態を測定したことになる。 まず、含水したゼラチン中の自由水・結合水の比率をDSCの吸熱ピークから算出した結果、ゼラチン濃度が高いほど結合水の比率が増加した。また実際の生体中の水構造は同じ水分量のゼラチンの水構造に近いことが示された。ごのことから、ゼラチンゲルで、ゲル濃度を制御することで生体高分子の模倣ができることを、水の構造から明らかにした。 次いで、PALSによってゼラチンゲルの高分子網目は含水率にほぼ比例して大きくなることがわかった。このことから、ゼラチン濃度の増加に伴い(含水率が低くなるにつれ)結合水の比率が増加するのは、水分子がゼラチン分子による網目構造を押し広げた形で含水しているために、水が自由水として存在しにくいためであるといえる。すなわち、生体高分子と相互作用する水の量が多くなると理解できる。 高分子は含水するにしたがって自由体積は大きくなると考えられる。特に乾燥状態からの初期の含水過程において自由体積は増加する。その後、含水率の増加に伴い大きくなった自由体積は、ある地点で減少し始め、最終的には純水中の自由体積に近づく(自由体積空孔半径約2.7Å)。これは、含水初期に水分子によって過剰に広げられた網目は含水率の増加に伴って徐々に水に占有され、最終的には水に置き換わるからと理解される。すなわち今回測定したPALSの結果は、高水分含有状態では、水分子間の自由体積を測定していると理解できる。これまで検討してきた合成高分子の自由体積空孔半径は2.7〜4.0Åであった。今回測定した生体高分子のゼラチンの自由体積空孔半径はこれに比較し小さい値となった。これは生体高分子と水との相互作用の結果、特に結合水にあると考えられ、これが生体高分子の特徴を決めていることが示唆された。
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Research Products
(4 results)