Research Abstract |
1.湖底堆積物中の単体硫黄の定量に関する研究(担当:奥村・清家):湖底堆積物試料に適用できる定量法を確立することができた(投稿準備中)。本法を用い,汽水湖中海の代表2地点を対象に,月1回の頻度で湖底堆積物中の単体硫黄S^0の含有量を調べた。その結果,S^0は硫化水素H_2S濃度の高い水域で高い傾向を示した。我々のこれまでの研究により,亜酸化窒素N_2O生成菌のなかには,H_2Sを利用できるものがあり,そのN_2O生成時にH_2SをS_0に変換することが示唆されていることからも,本結果は興味深い。 2.亜酸化窒素の生成に及ぼす硫黄化合物の影響に関する研究(担当:千賀・持田・清家):汽水湖宍道湖から単離したN_20生成菌2種を用い,それらのN_20生成に及ぼす硫黄化合物(H_2S,S^0,S_2O_3^<2->,SO_3^<-2>)の影響について検討した。その結果,特にH_2S濃度の影響を強く受けることが明らかとなった(投稿準備中)。 3.韓国汽水湖における無機態窒素の動態解析(担当:三田村・J.K.Choi・清家):本年度も比較の意味から韓国の汽水湖(永郎湖・華津湖)について調査を行った。永郎湖・華津湖のいずれも富栄養化の進行が顕著であった。 4.汽水・海水中のヒドロキシルアミンの定量に関する研究(担当:清家・福森・村上):次亜塩素酸ナトリウムを酸化剤に用いてヒドロキシルアミンNH_2OHを亜酸化窒素飛N_2Oに酸化し,これをECD付ガスクロマトグラフで定量する新規な方法を開発したが(Analytical Scienceに掲載),本法は塩分の妨害を受け,汽水・海水試料には適用できなかった。その後,海水成分中の妨害物質がBr^-であることを見出し,その対処策(本法の改良法)を確立できたことから,汽水・海水にも適用可能となった(投稿準備中)。その改良法を用い,NH_2OHの分布や挙動に関するデータが蓄積されはじめた。また,室内インキュベーション実験により,NH_2OHは,バクテリアによるNH_4^+の硝化(酸化)過程で生成し,かつ温暖化ガスであるN_2Oへの中間体であることが明らかとなった。 5.汽水湖中海における亜酸化窒素生成量の見積もり・総括(担当:清家):これまでほぼ3年間にわたり,中海を代表する2地点(中海湖心及び彦名沖窪地)を対象に,月1回の頻度でN_2Oの鉛直分布を調べその季節変化を観てきた。N_2O濃度は,NO_3^-濃度の増加する秋期から冬期にかけてと(両地点),硝化活性の高まる夏期に(中海湖心),それぞれ高くなる傾向が観られた。前者は脱窒由来,後者は硝化由来と考えられた。
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