2002 Fiscal Year Annual Research Report
植物プランクトンの硫化ジメチル生成に関する生理・生態学的研究
Project/Area Number |
14380247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
工藤 栄 国立極地研究所, 北極圏環境研究センター, 助教授 (40221931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平譯 享 国立極地研究所, 南極圏環境モニタリング研究センター, 助手 (70311165)
小達 恒夫 国立極地研究所, 研究系, 助教授 (60224250)
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Keywords | 硫化ジメチル / 極域海洋 / 植物プランクトン / 培養実験 / 単離株 / 珪藻 / 航海研究 / 増殖 |
Research Abstract |
本研究では年度の前半に室内実験を中心に実施し、後半に南極海域での航海研究に参加し、海洋表層での植物プランクトンの硫化ジメチル生成に関する実態調査を実施した。 室内実験において、海氷存在時の北海道サロマ湖から単離・培養していた珪藻株を用いて、低温(0〜2℃)での増殖特性と硫化ジメチル(DMS類)生成との関係を調べた。使用した数株の珪藻(中心目2林、羽状目2株)は、いずれも低水温条件にもかかわらず、培養に用いた海水強化培地中では2、3日で倍加するほど高い増殖速度を示し、この増殖は1週間ほど続き、その後増殖が停止するという共通した特性を示した。しかし、DMS類生成特性は株毎に大きく異なり、中心目2株は細胞中にDMS類生成をほとんど行わないのに対し、羽状目2株は比較的多最のDMS類生産を行っていた。また、羽状目珪藻のDMS類生産は、増殖中はもちろん、増殖が停滞した後もDMS類生成を継続し、停止後、少なくとも1週間は増殖中と同程度のDMS類生産が認められた。これらは海洋における植物プランクトンによるDMS類生産性が海域に出現するプランクトン種によって大きく異なること、さらには海域での植物プランクトンの増殖(一次生産性)が停滞しているときにおいてもDMS類が生産される可能性を指摘するものである。この実験結果に関し、現在、北極・南極海域より数種類の藻類の単離・培養を試み、検証中である。 航海研究においては、培養実験で推察された事象を自然環境中でも捉えるべく、南極海でのDMS類生産性の植物プランクトン群集組成による変動や季節・海域による植物プランクトン増殖の差異による生産性の変動実態の解明を目指し、試料採取と船上培養実験を繰り返し実施した。本年度実施したDMS類生成に関する室内・航海研究の大部分は次年度中に各種報告・論文として纏め上げる予定ではあるが、本年度は航海・野外研究等で得られた極域海洋の植物プランクトン・微細藻類の分布・増殖に関する実態を複数の論文として発表した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] T.Hirawake, S.Kudoh, S.Aolki, S.R.Rintoul: "Eddies revealed by SeaWiFS ocean color images in the Antarctic Divergence Zone near 140°E"Geophysical Research Letters. (In press). (2003)
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[Publications] S.Kudoh, S.Imura, Y.Kashino: "Xanthophyll cycle of ice algae on the sea ice bottom in Saroma Ko lagoon, Hokkaido, Japan"Polar Bioscience. (In press). (2003)
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[Publications] Y.Kashino, S.Kudoh: "Concerted response of Xanthophyll-cycle pigments in a marine diatom, Chaetoceros gracilis, to the shifts of light condition"Phycological Research. (In press). (2003)
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[Publications] T.Odate, K.Furuya, M.Fukuchi: "Photosynthetic oxygen production and community respiration in the Indian sector of the Antarctic Ocean during austral summer"Polar Biology. 25(11). 859-864 (2002)