2002 Fiscal Year Annual Research Report
新たな環境強変異原物質、ニトロベンズアントロンの生成と生物学的影響評価
Project/Area Number |
14380259
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
久松 由東 国立保健医療科学院, 研修企画部, 室長 (20124406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 宏 国立保健医療科学院, 生活環境部, 室長 (60106226)
稲津 晃司 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (70272698)
安達 修一 相模女子大学, 学芸学部, 助教授 (90129148)
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Keywords | ニトロベンズアントロン / 変異原物質 / 発癌物質 / ニトロアレーン |
Research Abstract |
ニトロベンズアントロン(NBAs)の中でも最も高い変異原性を示す3-NBAは、環境中に存在するモノニトロ体の中で最強の変異原性を示す化合物であり、既知の化合物の中で最も強いとされている1,8-ジニトロピレンと比較すると、TA98及びYG1024菌株に対し同程度であるか、わずかに強い。ベンズアントロン(BA)と二酸化窒素の光反応生成物は高い変異原比活性を示し、主生成物は2-(3.7%)及び3-NBA(0.7%)である。一方、二酸化硫黄の共存下では2-NBAの生成が抑制され、3-NBAの生成が促進される。BA-NO_2-O_3系の暗反応では光反応に比べ反応は遅いものの、反応生成物の変異原比活性は非常に高い値を示す。主生成物は3-NBAであり、2-NBAは痕跡程度生成するにすぎない。反応は光反応におけるラジカル反応の機構でなくイオン反応の機構によるものと思われる。 3-NBAについての動物発癌実験をラットへの経気道肺内投与及び腹腔内投与、マウスへの皮下投与を行い、それぞれ腫瘍発生を観察した。肺内投与及び腹腔内投与後には衰弱が観察され、衰弱は投与回数が増えるに伴って顕著となり、死亡例が出現した。肺内投与では肺に強い炎症と扁平上皮化生が認められ、投与完了後には重層化や角化を伴い、乳頭状を示す例もみられた。肺腫瘍は実験開始後234日目に最初の例を観察し、7から9ヶ月までに2.5mg投与の雌2例に扁平上皮がん、また、雌で肺に2例の腺がんを認めた。腹腔内投与では、肺内投与と同様にラットに著しい衰弱が発現し、死亡例が認められた。皮下投与後6ヶ月における腫瘍発生例は極めて少なかった。
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