2005 Fiscal Year Annual Research Report
西表国立公園における島嶼生態系の維持機構とその保全に関する研究
Project/Area Number |
14380277
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
伊澤 雅子 琉球大学, 理学部, 助教授 (10192478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 英利 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10201972)
土肥 昭夫 長崎大学, 環境科学部, 教授 (80091247)
傳田 哲郎 琉球大学, 理学部, 助教授 (50284948)
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Keywords | 西表国立公園 / 島嶼生態系 / イリオモテヤマネコ / カエル類 / 種の多様性 / ヒサカキ属 / 爬虫類 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
1.西表島3ヶ所に設置した自動撮影システムによってイリオモテヤマネコと動物相の生息状況と分布を調査した。また、低地部も含む前年までの資料と合わせて解析した結果、山地部においては、動物相は異なるものの繁殖個体も含むイリオモテヤマネコの生息が確認され、今のところ低地部との間に規則的な個体群の交流は認められなかった。また、低地部については環境によって行動圏の空間配置などのバリエーションが認められた。 2.生態系の状態の一つの指標として両生類をとりあげ、その多様性を調査するとともに、イリオモテヤマネコとの食物連鎖を通した関連についても検討した。 3.分子系統学的解析により、ツバキ科ヒサカキ属で石垣・西表島固有のヤエヤマヒサカキと、近縁とされる沖縄島固有のクニガミヒサカキが直接の姉妹群ではなく、それぞれ琉球列島に独立に侵入した可能性が示唆された。また、ヒサカキ属で西表島固有種や、石垣・西表島固有変種などが、渓流環境への適応によって西表島内の複数の河川で多所的に生じてきた可能性が示唆された。 4.西表島においてイリオモテヤマネコとならび生態系の上位を占めると思われるキシノウエトカゲとヤエヤマセマルハコガメを対象に、ミトコンドリアDNAのリボゾームRNA遺伝子の部分配列約800塩基対を調べ、それぞれの遺伝的多様性を検討した。その結果、検討したサンプルではまったく変異が認められなかった。これらの結果は、かつてイリオモテヤマネコについて報告された遺伝的多様性の極端な低さが西表島の他の脊椎動物にも共通する特徴であること、こうした種が上位を占める西表島の生態系が環境の変化に対してきわめて脆弱で適応性が低いことを強く示唆している。 5.これまでの成果を国際哺乳類学会で発表するとともに、ネコ科と保全に関わるシンポジウムでも発表・議論した。また学術雑誌に公表および公表の準備を進めている。
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Research Products
(13 results)