2004 Fiscal Year Annual Research Report
嗅細胞の匂い情報変換にかかわる細胞内分子ネットワークの解析
Project/Area Number |
14380376
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
倉橋 隆 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 教授 (90225251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 裕子 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助手 (10324823)
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Keywords | 両生類 / 嗅覚繊毛 / cAMP / リアルタイム定量実験 / ケージド化合物 / 順応 / 電流 / におい物質 |
Research Abstract |
過去の報告から、両生類の嗅覚繊毛標本に生化学的なアッセイを行うと、ある種の匂いは繊毛膜標本にcAMPを産生しないものがあるといわれる。それを根拠として、cAMPではない物質が匂い情報変換を担っているであろうと仮説が提唱され、その強力な候補のひとつがIP3であったのである。本実験では単一細胞内で生じる反応に対して、リアルタイム定量実験を展開し、「cAMPを産生しない匂い物質」が実際に繊毛内にcAMPを産生していることを証明した。したがって、生化学的な実験から派生したIP3の仮説の根拠が崩れた形になると結論してよい。 実験では、「cAMPを産生しない匂い物質」で生じた単一細胞応答と細胞内のcAMP(ケージド化合物の光解離)との直接相互相関を観察した。両者では、特徴的な電気生理学的性質が、ほぼ一致し、cAMPによって開くチャネルと「cAMPを産生しない匂い物質」が開くイオンチャネルが同一のものであることを示唆した。さらに、両刺激を短時間パルスとして数秒の間隔をあけて細胞を刺激すると、両者は相互的な順応を示した。さらに、匂い応答のピーク(すなわち順応が起こる前)において、実時間cAMP上昇を起こすと、cAMP誘起電流の大きさは、細胞内cAMPがにおい物質によって上昇しているとする仮定に基づく挙動と一致した。 また嗅細胞ダイナミックレンジの決定機構に関わる問題点(1)絶対的なポジション=匂い感度がどの分子によって決定されるか(2)非順応下での狭いダイナミックレンジ(3)応答飽和がどの分子で決定されるかというこれらの問題点に関して新たなる知見を得た。すなわち、絶対的なポジションは情報変換チャネル(CNG&Clチャネル)までにおおよそが決定され、その後、膜の非線形過程(主に電位依存性Kチャネル)によって高感度側に修正される。狭いダイナミックレンジを決めているのはCNGチャネルとClチャネルの連携によって実現する高協同性が主要な要因となる。応答飽和はCNG&Clチャネルの飽和に加えて、膜の非線形性および活動電位発生以降レベルで、さらに修正を受ける。さらに本研究では、以前から多くの方々に疑問として出されてきた情報変換電流の大きさ(>100pA)と嗅細胞の入力抵抗から予測される脱分極、実測される脱分極に関しての一見の矛盾点を解説した。
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Research Products
(3 results)