2002 Fiscal Year Annual Research Report
学際的方法による吃音の発生・進展・自然治癒と基礎的治療情報に関する研究
Project/Area Number |
14390018
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
若葉 陽子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20014730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
氏平 明 豊橋技術科学大学, 留学生センター, 教授 (10334012)
権藤 桂子 立教女学院短期大学, 幼児教育科, 教授 (90299967)
藤野 博 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (00248270)
宮尾 益知 国立成育医療センター, 発達心理科, 科長
伊藤 憲三 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 教授 (30305297)
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Keywords | 吃音 / 幼児 / 学童 / 進展 / 症状 / 基礎的治癒情報 / 声帯活動 / 自然治癒 |
Research Abstract |
吃音は多種の要因が関与した障害であるが、いまだ病因は明らかではない。本研究では、吃音の病因、進展および自然治癒のメカニズムについて、遺伝学的・医学的(脳生理学的・耳鼻咽喉科学的)・言語病理学的・聴能学的・心理学的・言語学的・工学的手法を有機的に統合した学除的チームによって研究を進めてきた。 音声・映像が鮮明に録画・録音できる観察システムを設置し、対象児およびその保護者に以下のような項目について、観察・実験・面接・資料収集を行った。対象児:吃音症状(養育者との遊戯場面の観察=母子場面・父子場面) (2)吃音重症度 (3)言語能力検査(新版K式発達検査、ITPA言語学習能力診断検査) (4)構音検査 (5)吃音体験聴取 (6)運動能力 (7)養育者との交流状態 (8)声帯活動検出用発話サンプルの採取 (9)聴力検査 (10)両耳分離聴実験 (11)利き手検査 (12)脳内活動検査。保護者:(1)気質の質問紙 (2)生育歴質問紙と面接 (3)吃音歴質問紙と面接 (4)愛着関係質問紙 (5)遺伝的要因質問紙 (6)緒的問題行動質問紙 (7)TS式幼児・児童性格検査 (8)SM社会成熟度検査 (9)親子関係検査。 吃音症状の進展では、重症群で2歳代に発症した男児14名と女児12名の吃音歴を検討し、3歳代までに注目を集めやすい吃音症状であるblockingと随伴症状が全員にみられることを見出した。2歳4ヶ月〜8歳9ヶ月の吃音児12名の実験・観察・検査・資料収集の結果では、2歳で既に多様な症状の生起、声帯の緊張を推定し得る症状がみられ、8〜9歳(学童中期)の比較的重症児で、情緒反応や回避反応がみられた。これらの症状の初発・進展過程に関して今後検討を続けていく予定である。言語能力の発達では、生活年齢に比べ有意な遅れは認められなかった。母子相互作用では、吃音児は発話数が少なく、発話速度も遅く、pause timeが長い傾向があり、母親は、発話長・発話速度・pause timeからみて、会話を統制している傾向がみられた。声帯活動に関する分析では、成人吃音者にみられる呼気と喉頭の制御不全を示唆する結果が得られた。また、発声前の声門の開閉状況、逆フィルタ分析による声帯振動波形の観測方法、両耳分離聴実験の学齢児への実施方法、脳内活動の分析方法を検討した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 若葉陽子: "不十分な母子愛着関係と強い心理的不安が発吃の基盤となった幼児吃音の治癒過程"特殊教育研究施設研究報告. 第2号. 59-89 (2003)
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[Publications] 氏平 明: "英語の自然発話に現れる非流暢性の形と生起環境について"茨城大学留学生センター紀要. 第1号. 13-21 (2003)
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[Publications] 権藤桂子: "保育者の音声特徴(3)"立教女学院短期大学紀要. 第34号. 165-170 (2002)
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[Publications] 宮尾益知: "LD/ADHDへの神経発達的アプローチ"LD研究. 10. 91-100 (2002)
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[Publications] 宮尾益知: "多動、落ち着きがない"小児科. 43. 1274-1277 (2002)
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[Publications] 宮尾益知: "外来診療に役立つ検査-外来でできる発達心理的検査"小児科. 66. 311-317 (2003)