2002 Fiscal Year Annual Research Report
紫外線照射と老化によって生じる皮膚のD-アミノ酸含有タンパク質の性質
Project/Area Number |
14390032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 紀子 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90199290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 毅 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (10274143)
下岡 正志 アサヒテクノグラス(株), ライフサイエンスセンター長
多島 新吾 防衛医科大学校, 教授 (60129525)
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Keywords | 老化 / 紫外線 / 太陽光 / D-アミノ酸 / ラセミ化 / 異性化 / 皮膚 / 翻訳後修飾 |
Research Abstract |
目的:生体を構成するタンパク質はすべてL-アミノ酸から構成されているが、我々は、従来の研究で、眼の水晶体の主要構成成分であるαA-クリスタリン中に通常では見られないD-β-アスパラギン酸(D-β-Asp)が存在し、その量は加齢に伴い増加することを見出した。さらにその生成機構について詳細に検討したところ、本反応はAsp残基の隣接残基が立体障害が小さいとき、また、そのAsp残基周辺の立体構造が反転の反応場を提供しているときに、容易に生じることを明らかにした。このことは老化組織にはD-β-Asp含有タンパク質が普遍的に存在することを示唆している。又、本反応は紫外線、放射線の照射によっても促進されることがわかったので、紫外線照射の影響が著しい皮膚においてD-β-Asp含有タンパク質が存在するか否かを検討することにした。 方法と結果:ヒトαA-クリスタリン中のD-β-Aspを含む前後数残基と同一配列からなるペプチドを3回繰り返したペプチド、peptide3R(Gly-Leu-D-β-Asp-Ala-Thr-Gly-Leu-D-β-Asp-Ala-Thr-Gly-Leu-D-β-Asp-Ala-Thr)を合成した。これを抗原としてこのペプチドを特異的に認識する抗体を調製した。また、本抗体がD-β-Aspのみを認識するかどうかを検討するため、lle-Gln-Thr-Gly-Leu-Asp-Ala-Thr-His-Ala-Glu-Argの配列でAspをL-α-Asp, L-β-Asp, D-α-Asp, D-β-Aspにした4種類の異性体ペプチドを合成し、本抗体との反応をELISAで確認した。その結果、本抗体はD-β-Asp含有ペプチドのみを特異的に認識することが明らかになった。そこで本抗体を用いて紫外線被爆の影響が直接的である顔の皮膚の免疫組織染色を行ったところ、老人の顔の皮膚に顕著にD-β-Asp含有タンパク質が認められた。又、幼児の顔の皮膚および、老人でも紫外線被爆の少ない、腹や胸にはD-β-Asp含有タンパク質は存在しなかった。これらの結果はタンパク質中でのD-β-Asp生成が老化と紫外線照射に密接な関連があることを強く示唆している。次いで、老人の顔の皮膚組織から抽出したタンパク質を2次元電気泳動にかけ、本抗体でwestern blotを行ったところ、分子量50KDaと70KDaめタンパク質がD-β-Aspを含むタンパク質であることが明らかとなった。現在、本タンパク質を同定中である。
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[Publications] N.Fujii, S.Tajima, N.Tanaka, N.Fujimoto, T.Takata, T.Shimo-Oka: "The presence of D-beta-aspartic acid-containing peptides in elastic fibers of sun-damaged skin : A potent marker for ultraviolet-induced skin aging"Biochem. Biophys. Res. Comm. 294. 1047-1051 (2002)
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[Publications] N.Fujii: "D-amino acids in living higher organisms"Origin of Life and Evolution of the Biosphere. 2002. 103-127 (2002)
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[Publications] M.Kaneda, K.Nakagomi, Y.Sadakane, T.Yamazaki, T.Tanimura, T.Akizawa, N.Fujii, Y.Hatanaka.: "A Rapid HPLC Determination of the Isomerization Level of ASP-Residues within Synthetic Alpha A-Crystallin Fragments"Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies. 25. 2445-2454 (2002)
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[Publications] K.Nakagomi, K.Takatsu, S.Takagi, H.Ebisu, Y.Sadakane, N.Fujii, T.Akezawa, T.Tanimura, Y.Hatanaka.: "Isolation of cathepsin B inhibitory peptides, Cabin-A1 and -A2, from a tryptic and chymotryptic hydrolysate of human serum albumin"Peptides. 23. 1567-1571 (2002)
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[Publications] K.Nakagomi, A.Fujimura, H.Maeda, Y.Sadakane, N.Fujii, T.Akizawa, T.Tanimura, Y.hatanaka.: "Isolation of novel peptides, cabin-1,-2,-3 and -4,that inhibit cathepsin B from a thremolysin digest of human plasma"Biol Pharm Bull. 25. 564-568 (2002)
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[Publications] 藤井紀子: "太陽紫外線によるタンパク質損傷"太陽紫外線防御研究会. 12. 47-53 (2002)