2002 Fiscal Year Annual Research Report
朱の産地推定から見た古代国家成立過程に関する総合的研究
Project/Area Number |
14390063
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
今津 節生 奈良県立橿原考古学研究所, 資料室・保存科学研究室長, 総括研究員 (50250379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 光子 別府大学, 文学部, 教授 (60289642)
今井 亮 東京大学, 大学院・理学系, 助手 (90223304)
南 武志 近畿大学, 理工学部・生命科学科, 助教授 (00295784)
富田 克敏 近畿大学, 教職教育学部, 教授 (70025352)
高橋 和也 理化学研究所, 加速器基礎研究部RI技術室, 研究員 (70221356)
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Keywords | 朱 / 辰砂鉱石 / 産地推定 / イオウ同位体比 / 微量元素 |
Research Abstract |
中国の辰砂鉱石の産地である貴酬省を中心に鉱山資料を採取して硫黄同位体比を測定した。また、国内の鉱山から採取した辰砂と遺跡から出土した朱について、硫黄同位体比を測定した。その結果、中国の辰砂の多くはプラスの値をとり、+20‰に近い値を示すものもあった。また、日本の主要な産地から採取した辰砂の硫黄同位体比を測定したところ、-2〜-7の値を示した。中国の辰砂は基盤に広く分布する石灰岩に微量含まれている硫酸根起源の^<34>Sに富んだ重い硫黄同位体の寄与が指摘できる。また、日本産の主要な辰砂は西南日本外帯の基盤の岩石に含まれる硫化物起源の^<32>Sに富む軽い硫黄同位体の寄与が指摘できる。このことから、中国産と日本産の辰砂の区別は可能であると判断できる。 一方、遺跡出土の朱の硫黄同位体比を測定したところ、弥生時代中期から後期の西日本の王墓にプラスの値を示す朱が発見された。また、大和を中心とする古墳時代の前方後円墳の埋葬施設から発見された朱の硫黄同位体比は、いずれもマイナスの値を示した。このことから、弥生時代中・後期の西日本の王墓の中に、中国産の辰砂を微粉末にして作った朱を使用した可能性のあることが指摘できる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 今津節生: "古代朱の産地を推定する"保存科学研究集会2002. 42-45 (2002)
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[Publications] 本田光子: "考古資料としての赤色顔料-弥生時代から古墳時代の色-"保存科学研究集会2002. 40-41 (2002)
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[Publications] 南 武志, 今津節生, 今井 亮: "イオウ同位体より見た朱の産地推定"日本文化財科学会第19回大会 研究発表要旨集. 72-73 (2002)