2003 Fiscal Year Annual Research Report
南インドのラーマーヤナ伝承と東南アジアへの伝播についての文献学的及び民俗学的調査
Project/Area Number |
14401001
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 博司 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (20230427)
|
Keywords | ラーマーヤナ / ラーマキエン / ヒンドゥー教 / インド叙事詩 / タイ / 民俗芸能 / ワヤンゴレク / ワヤンクリ |
Research Abstract |
今年度は、研究の第2段階として、ラーマーヤナの伝承形態と伝播の状況について、収集した国内外の研究成果を吟味し、とくに現代的意義にも留意しつつ考察した。現地においては現地人の協力を借りながら、必要な参与観察と面接調査を行い、インド叙事詩のアジアへの伝播と流布の形態を、具体的な地理的・歴史的場面において跡づけるよう心がけた。南アジアと東南アジアでインド起源の叙事詩神話がどのように流布し受容されているかを、文献学と民俗学(芸能)の二つの方法を用いて分析する準備を整えることができた。さらに、南インド系の叙事詩の伝承と異文化交流の足跡をたずね、その杜会的意義と役割とを明らかにするための準備段階を終了した。 東南アジアにおける南アジア、とりわけ南インドの文化的影響を、「ラーマーヤナ」の伝播という具体的なテーマに即して跡づけることで、従来漠然と指摘されてきた両地域間の関係を、文化の伝承という側面から確立するだけでなく、東南アジアの王権や地方権力にとってのインド叙事詩の政治的・杜会的意義をも再確認することができた。これらは、上に述べた文献研究と現地調査の両面が相俟ってこそ、はじめて可能になったものである。 具体的には、前年度に続いて、南アジア・東南アジアで多様な形で伝承されたラーマ説話を採話し、画像や映像に収め、印刷資料・映像資料を収集した。東南アジアに伝播したラーマ物語、特にタイやミャンマーの伝承に注目し、流布の形態、筋立て、地域的変異を詳しく記述して特色を分析した。それを南インド版ラーマーヤナと比較考察し、伝播の道筋や変容の過程を明らかにすることが最終的な目標となる。 これまでの研究成果は、平成16年5月に出版予定の『ヒンドウー教-その過去と現在-』(講談社選書メチエ)に反映されている。
|
Research Products
(1 results)