2004 Fiscal Year Annual Research Report
南インドのラーマーヤナ伝承と東南アジアへの伝播についての文献学的及び民俗学的調査
Project/Area Number |
14401001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 博司 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (20230427)
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Keywords | ラーマーヤナ / マハーバーラタ / ヒンドゥー叙事詩 / 東ジャワ / トゥングル人 / シンガポール / 多元社会 / ワヤンクリ |
Research Abstract |
今年度は本研究プロジェクトも後半に入り、これまでのようにインドシナ世界を主たる対象地域とするばかりでなく、調査研究の対象をマレーシア・シンガポール以東の地域まで拡げ、より総合的・網羅的な観点も加えつつ展開を図ることにした。 現代の東南アジア多元世界にも目を向け、シンガポールのヒンドゥー系の祭祀に見られるヴィシュヌ=クリシュナ系の儀礼要素や叙事詩的諸要素の伝承形態を探り、インド系移民社会および東南アジア多民族社会におけるヒンドゥー教的伝統、とくに叙事詩的伝統の維持と変容について調査をおこなった。また、タイ王国プーケット県のプーケット・タウンに伝わる華人系道教寺院における年祭であるヴェジタリアン・フェスティヴァルを取材し、祭祀における宗教的多元性やヒンドゥー教的要素を、儀礼への参与観察と寺院関係者との面接調査を通じて明らかにした。 さらに、過去に関しては、スラバヤの「日本・インドネシア文化交流センター」の協力を得て、インドネシア・ジャワ島東部に存するヒンドゥー教の遺跡群を中心に研究文献の広範な収集と現地調査をおこない、紀元16世紀に至るジャワのヒンドゥー教の最終局面を確認した。そこに息づく叙事詩的な伝統については、現地のインフォーマントから、イスラーム化した現代にあっても残るヒンドゥー教叙事詩の伝統(たとえば結婚式におけるワヤンクリッの上演など)について面接調査して知見を得ることができた。各遺跡の写真も数百枚にわたって撮影し、詳細な分析を加える段階に至っている。 次年度には、研究の完結を期して、これまで調査し得ていない東ジャワのインドネシア系ヒンドゥー教徒であるトウングル人の実態を調査して、叙事詩的伝統を含むインド系ヒンドゥー文化の伝承の有無を調べるとともに、東南アジアにおけるヒンドゥー文化、とくに叙事詩的伝統の意義を、過去と現代の両面にわたって論じたい。
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Research Products
(2 results)