2002 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム・ガラスにおけるユダヤ・ビザンツの技術的、様式的影響と展開
Project/Area Number |
14401004
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Research Institution | The Middle Eastern Culture Center in Japan |
Principal Investigator |
真道 洋子 財団法人中近東文化センター, 学術局・研究部, 研究員 (50260146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 泉 東京理科大学, 理学部・応用科学科, 教授 (90155648)
川床 睦夫 財団法人中近東文化センター, 学術局・研究部, 主任研究員 (00260141)
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Keywords | イスラーム・ガラス / イスラーム考古学 / フスタート / シナイ半島 / ラーヤ / ビザンツ / 化学分析 / エジプト |
Research Abstract |
本年は、イスラーム・ガラスの基礎データ作成のために、真道が中心となり、シナイ半島ラーヤ遺跡出土の8世紀から11世紀の出土遺物の生理・研究を中心に行った。出土点数は1万点に及ぶため、今回は装飾ガラス1395点を対象として、撮影、実測、詳細なデータ作成を行った。とくに、8世紀に登場するラスター彩ガラスに注目し、化学分析および考古学的様式の検討を行い、これまでのラスター彩ガラスの中でラーヤ出土ラスター彩ガラスの位置付けをおこなった。この結果、これまでの研究の空白部分である10世紀前後のシリアにおけるラスター彩ガラスを埋めるグループの存在を明らとした。 さらに、中井が中心に進めている化学分析では、出土ガラス分析全般の組成傾向を知るため、ポータブル蛍光X線分析装置を発掘現場の研究施設に持ち込み、200点以上に及ぶ分析を行った。これによって、ラーヤ出土ガラスは、大部分が典型的なソーダ・ガラスであるが、エジプト・シリアのローマ・ガラスの系統に属するナトロンを使用した組成と9世紀以降のイスラーム・ガラス組成である植物灰を利用したと考えられている組成が混在することが解明された。これによって、ラーヤ出土ガラスの研究が、前時代からイスラーム・ガラスへの大きな変革の状況を研究する上で極めて有効であることが確証された。 発掘調査全般は調査隊長である川床が指揮した。また、フスタート出土品およびブービエ・コレクションプトなどを対象に、素焼きの水壷の首部に取り付けられた透かし彫り模様の研究を行い、イスラーム文様の中に見られるコプト文様との影響関係について解明を行った。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Yoko SHINDO: "Islamic Glass Finds from Raya, Souhtern Sinai"Annales du 15e congres de l'association internationale pour l'histoire du verre New York 2001. 180-184 (2003)
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[Publications] 中井泉, 保倉明子, 畑祥子, 沢田貴史: "ポータブル蛍光X線分析装置によるシナイ半島出土遺物のその場分析"エジプト・シナイ半島ラーヤ・トウール地域の考古学的調査2002年度. 53-59 (2003)
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[Publications] 沢田貴史, 保倉明子, 中井泉, 真道洋子: "ポータブル蛍光X線分析装置によるシナイ半島出土ガラスの化学分析"エジプト・シナイ半島ラーヤ・トゥール地域の考古学的調査2002年度. 66-70 (2003)
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[Publications] 真道 洋子: "イスラームのガラス ガラスに見るイスラームの生活と美"財団法人中近東文化センター. 88 (2003)
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[Publications] 川床睦夫: "エジプトのイスラーム文様-暮らしの中に華開いた美しき意匠-"エジプトのイスラーム文様展組織委員会. 326 (2003)
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[Publications] 川床睦夫編: "エジプト・シナイ半島ラーヤ・トゥール地域の考古学的調査2002年度"イスラーム・エジプト調査委員会 財団法人中近東文化センター. 70 (2003)