2004 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム・ガラスにおけるユダヤ・ビザンツの技術的、様式的影響と展開
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14401004
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Research Institution | The Middle Eastern Culture Center in Japan |
Principal Investigator |
真道 洋子 財団法人中近東文化センター, 学術局, 研究員 (50260146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川床 睦夫 財団法人中近東文化センター, 学術局・研究部, 主任研究員 (00260141)
中井 泉 東京理科大学, 理学部, 教授 (90155648)
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Keywords | イスラーム・ガラス / ラーヤ遺跡 / 組成分析 / ナトロン・ガラス / 植物灰ガラス / エジプト / パレスティナ / ゲニザ文 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、シナイ半島ラーヤ遺跡発掘調査(隊長:川床睦夫)で出土したイスラーム・ガラスを中心に考古学的、分析化学的研究を進めた。発掘区の拡大に伴い、対象となる時代が8世紀にまで遡ることとなり、本テーマに合致するビザンツ時代からイスラーム時代への変容期にあたる資料を得ることができた。とくに、シナイ半島という地理的状況からヨルダンおよびパレスティナ地域との関連が深く、750年前後に起きた大地震が遺物の編年考証の指標とされており、さらに、この時期がウマイヤ朝からアッバース朝への政治的変化とほぼ一致することから文化変容の考察にも役立っている。これらの地域の資料とシナイ半島出土ガラスの史料の比較研究が今回の大きな柱となった。これによって、ラーヤが8世紀までビザンツ支配下のシリア・パレスティナ地域の影響を受けていたのが、9世紀に城塞がイスラーム化され、モスクが建設される頃の時期にはエジプトの影響が強まっていることが、搬入したガラスから判断されることとなった。 化学分析に関しては、昨年度の研究結果得られた、原料の相違によるナトロン・ガラスと植物灰ガラスの分類をさらに細分する試みを行い、ナトロン・ガラスにおいて、カリウムとストロンチウムの含有量に基づき、さらに二分できることが明らかとなった。この差がエジプトとシリア・パレスティナ地域との地域差を指し示す要素である可能性に着目し、今後さらに他地域のデータを集積し、比較することで研究を深めていく予定である。 これらの成果は、オリエント学会、分析化学会、エジプト調査関連研究会などの諸学会・研究会で成果発表を行った。また、出土品以外の分野でも、ユダヤ教徒に関わるゲニザ文書、中国史書などの文献や諸地域の出土品などの研究も進め、成果の一部をまとめた。
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Research Products
(6 results)