2004 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な社会開発にむけた協同組合の可能性についての研究
Project/Area Number |
14401010
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 敦 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (60261872)
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Keywords | フィリピン / 協同組合 / 所有 / 階層的人間関係 / 農村金融 / 家計戦略 |
Research Abstract |
本研究はフィリピン共和国ボホール州での現地調査をもとに、農村の社会開発における協同組合の役割を検討するものであるが、最終年度に当たる本年度は、昨年度までの現地調査の成果の分析と、日本の農業協同組合との比較を行った。その結果明らかになってきたことは、フィリピンの協同組合開発の失敗は、「協同組合のジレンマ」とでもいうべき協同組合独特の問題の一帰結であり、またその背後には植民地化以前にまでさかのぼるフィリピン社会(そして東南アジア島嶼社会)の独特の社会構築原理(資源の所有形態、階層的な人間関係の認識、独特の金融システムに現れる、個人同士、および個人と環境との関係の原理)があることである。これらの社会構築原理は資本主義発達以前から存在し機能してきたものであるが、現在のような市場が広がりつつある社会においてそのような原理に基づく協同組合がどの程度まで維持可能であるとは限らず、その点が協同組合の失敗を招く一つの原因となっている。とはいえ、こうした歴史的に形成されてきた社会の原理が資本主義的活動と相容れないとも必ずしもいえない。そこで、歴史的に形成されたフィリピンの社会秩序が、どのように資本主義的経済活動を取り込むことができるのかを明らかにすることが必要である。この点の分析は、一方でフィリピンの金融政策と、地方,で地域農民の家族生計戦略と、それぞれ密接に関わっている問題であり、現在、分析を進めているところである。
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Research Products
(1 results)