Research Abstract |
過去2カ年の調査で,欧州6カ国において25自治体48ホーム(65ユニット)の知的障害者グループ・ハウジング(入居者398人)のデータを採取じた。本年度は,この中から,入居者の生活状況とケアスタッフの支援を詳細に把握することを,目的に,施設解体がほぼ完了し地域生活へ移行している国スウェーデン,施設規模縮小国デンマーク,介護保険制度下で入所施設の存続する国オランダの3カ国の7ホームに再訪問し,入居者それぞれの一日の生活時間と日中活動の内容,住居の使われ方や知人の訪問頻度などについてインタビュー調査を実施した。 これまでの研究で明らかにした住戸の平面構成や面積水準との相関を交えて考察を行っているが,「住戸型」に移行しているスウェーデンとデンマークにおいては,わが国の擬似家族的な生活とは異なり,各自の基本的な生活が多様に「住戸」で展開されている。例えば,わが国に比べてはるかに簡易な食事(パンとコーヒー)であるとはいえ,朝食は準備を含めて自室で行っており,また,同じくもっぱら自室で行われている趣味活動も実に多様であるが,これに応じた設えが整えられている。コモンでは,入居者が気の向いた場合の交流の場として,主に日中活動からの帰宅後や食後のコーヒーを飲みながらの歓談に用いられているほか,夕食をルームメイトやスタッフと共にする場合が一般的であったが,これを望まない入居者は,自室での選択も自由である。従って,「住戸」はひとり用の一般住宅同様の面積及び設備をもち,これに、障害を持つが故に必要なケアと共同居住のためのコモンが付加された住居水準が確保されているといえる。また,これらの住居のストックが充実されることにより,入居者の希望に応じた転居も実現している。 一方,基本的には「居室型」にとどまるオランダでも,住居水準の向上と地域生活への移行を急速に進める過程にあり,旧来の大規模施設法人が,その広大な入所施設敷地内に一般の住宅を建設して入居者を募る計画や,入所施設否定の立場で支援体制を進めてきた組織との共同化などが実現するなど,制度の近似したわが国にも参考となるトレンドを確認することができた。
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